圏央道あきる野土地収用事件
執行停止を否定した最高裁決定に断固抗戦し,収用裁決の取消を求める決議


 最高裁判所第3小法廷(上田豊三裁判長)は,去る3月16日,あきる野市牛沼地域の圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設事業に関する土地収用に対して,執行停止を求める特別抗告及び許可抗告を不当にも棄却する旨決定した。
 本件土地収用は,居住の自由を奪い,住民らの日常生活を一方的に破壊するものであるばかりか,とりわけ病気入院中の住民に対しては,健康や生命すら危うくする多大な精神的負担を強いるものである。現に,本年1月14日,住民の一人は,建物取り壊しや立ち退きの強行に著しい不安を訴えながら,病床で息を引き取っている。
 昨年(2003年)10月3日,東京地方裁判所民事第3部は,住民らが「終の栖」を奪われることの重大性を直視し,憲法で保障された居住の自由を尊重する立場から,執行停止を決定した。この決定は,公共事業のあり方に疑問を投げかけ,行政の暴走に歯止めをかけた画期的な決定と評価されている。
 この執行停止を覆した東京高等裁判所の決定が,住民らの憲法上の権利侵害を無視するものであることは明らかである。にもかかわらず,最高裁は,憲法問題を何ら検討もせずに,執行停止を求める住民らの特別抗告を棄却した。また,最高裁は,住民らのかけがえのない権利が奪われることを無視し,「回復困難な損害を被るものとは認められないとした」高裁の不当決定を容認し,同様に許可抗告も棄却したのである。
 しかし,来る4月22日に予定されている本案取消訴訟の判決までわずかな期間,執行を停止しても何らの影響のないことは誰の目にも明らかである。本件決定に示されている最高裁の態度は,この地域に長年居住してきた住民の切実な願いを一顧だにしない,きわめて冷たいものであり,行政追随といわざるをえない。国民の権利の砦となるべき司法の役割を投げ捨てたものに他ならない。このような決定を容認することは到底できないものであって,最高裁判所に対して,断固抗議する。
 そもそも,圏央道の建設により,健康被害を発生させることがわかっていながら,少なくとも,それが予想できるにもかかわらず,そのような欠陥道路,瑕疵ある道路を建設するとすれば,それはもはや犯罪行為と言わざるを得ない。最高裁の決定は,この犯罪行為に加担するに等しいものであり,東京都による代執行の強行も断じて許されない。
 このような圏央道建設については,事業認定はもとより,そのために土地収用を認めた収用委員会の裁決が違法であることは明らかである。東京地方裁判所においては,来る4月22日,このような違法な事業認定及び収用裁決を明確に取り消す判決を言い渡されること,そして国や道路公団においては,圏央道の建設そのものを中止するよう強く求める次第である。
2004年3月21日
第33回全国公害弁護団連絡会議総会



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