高尾山・八王子城跡の圏央道工事の中止を求める特別決議

 東京都収用委員会は,圏央道・高尾山トンネル工事事業地を収用するため,来る4月26日(第1回)と5月31日(第2回)に公開審理を開催すると一方的に通告した。
 高尾山は1300種を越える植物や80本のブナ林,800本のイヌブナがあり,豊かな植相から昆虫や動物も多く,世界遺産に相当する貴重な自然である。
 すでにトンネル工事が進行している国史跡八王子城跡では,御主殿の滝が涸れるなどのトンネル工事を原因とした被害が発生している。そして,高尾山と八王子城跡とは地層が似通っていることから,八王子城跡で起こる地下水脈枯渇は高尾山でも繰り返される可能性が高いことは,国土交通省自身が認めていることである。
 高尾山トンネル工事が強行されれば,水脈が破壊され,歴史的な修験道の道場であり,今日では市民にも開かれた水行の場である琵琶滝,蛇滝が涸れ,1300種を超える豊かな植相と生態系を支える水環境が破壊される危険性が高い。
 高尾山は,国民・都民にとっての貴重な自然であり,この自然を壊させてはならないと一昨年4月には永六輔さん・小沢昭一さんら多数の文化人の賛同を待て3大新聞紙上に圏央道工事により高尾山が危機に瀕しているという意見広告が出るなど,高尾山の貴重な自然を護れという声が大きく広がってきたが,たたかいは,今,正念場を迎えている。
 こうしたもとで,東京地方裁判所八王子支部で行われていた圏央道工事差し止め訴訟は,昨年12月25日に結審し,遠からず判決の見通しである。
 圏央道が,世界遺産に匹敵する高尾山や八王子城跡の貴重な自然環境を破壊し,オオタカの営巣放棄や地下水脈を破壊するばかりか,裏高尾地域での騒音被害や大気汚染の被害を発生させることは科学的に明らかである。また,圏央道は,都心の渋滞解消や多摩地域の交通渋滞の解消と経済の発展に必要であるとの国土交通省の主張が虚偽であり,公共性が認められないことも明らかとなっている。
 圏央道事業は,未来の人々に遺すべき貴重な自然環境を取り返しのつかないほどに破壊するものであるばかりか,巨額な税金の無駄使いである。最近明らかとなった圏央道橋梁工事入札談合事件も,圏央道が国民の為ではなくゼネコンのための無駄な公共事業であることを明らかにした事件である。
 我々は,東京地方裁判所八王子支部が公正な判決を言い渡すことを強く希望する。
 我々は,東京都収用委員会による公開審理の一方的な開催に強く抗議する。
 我々は,国土交通大臣・国土交通省,中日本高速道路鰍ノ対し以下の通り要求する。
 以上,決議する。
2007(平成19)年3月21日
第36回全国公害弁護団連絡会議総会



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