2005年環境サマーセミナー

第58期司法修習生 芝田佳宜

 去る7月16日(土)、17日(日)に鎌倉でサマーセミナーが催されました。去年は茨城県の土浦で開催されていたとのことでしたが、私は実務修習で熊本に行っていたため参加できず、今回が待望の初参加となりました。
 1日目は、青山貞一武蔵工業大学教授の『廃棄物訴訟と科学者の役割について』、浅岡美恵弁護士の『地球温暖化防止への法的戦略と国際・国内交渉』、馬奈木昭雄弁護士の『公害裁判』の3本の講演がありました。
 青山先生は、以前は国からの依頼でアセスメントを手がけてこられたにも関わらず、国や地方公共団体を相手とする訴訟で鑑定を行い、証人として出廷されるといった活動をされるようになった方で、環境総合研究所の代表として環境問題に関する様々な鑑定・分析をされる一方、武蔵工業大学で教鞭を執られているということでした。
 今まで、弁護士の立場からの環境問題の講演は聴いたことがあったのですが、環境問題の解決において不可欠の役割を果たす技術者の方の話しは初めてであったので、斬新・新鮮で大変興味深く聞かせて頂きました。とりわけ、国からの「おいしい」仕事が入らないようになり、経済的に不遇な立場になっても自らの信念に基づいて活動をされる青山先生の姿は深く心に焼き付けられました。
 浅岡先生からは、スモン訴訟や水俣病訴訟に関わって、被害が出てから動いたのでは遅いことを痛感したという、環境問題とのかかわりに始まり、地球温暖化の話、とくに京都議定書に関連した話を聞かせて頂きました。
 業種別の二酸化炭素排出量の数値は公表されているにもかかわらず、特定の業者が排出する数値が公表されていないという問題点等につき言及されていました。
 馬奈木先生からは、弁護士になりたての頃に関わられた水俣病訴訟から、つい先日、高裁決定が出た諫早湾の問題についてのお話を聞かせて頂きました。
 諫早湾は、福岡・長崎・熊本に面しているにもかかわらずなぜ、佐賀地裁を選択したかという話から、行政事件訴訟法44条の話、裁判で勝つための主題の設定の仕方等、専門的で深いお話を聞くことができて大変為になりました。
 特に、諫早訴訟で高裁で負けた原因を単に裁判官の資質のせいとせず、分析的に検討し、最高裁での勝利につなげようとされる姿勢には弁護士としてのあるべき姿を見たような気がしました。個人的には、馬奈木先生のこの講演を聴けたことがセミナーに参加した最大の収穫だったと思います。

 ところで2日目は、座りづくしの1日とは180度うってかわって、街歩き・山歩きの1日でした。
 まずはマンション開発が問題となっている、鎌倉の閑静な住宅街を歩きました。その地域は戸建て住宅により構成された調和のとれた街並みであったのですが、マンション開発により街並みが乱され、それに地域住民の皆さまが反対運動をされていたという構図でした。開発により建てられたマンション自体は3階から5階建て程度と他の地域に比べればそれほど高いものではありませんでしたし、自分でも買ってみたくなるほど環境・外観が好ましいものでした。しかし、それでも地域住民の方々にとっては大問題であるわけで、強い感受性が必要なのだと感じさせられた次第です。
 次に、電車で隣の北鎌倉に移動しました。開発が予定されていたのですが、住民運動の甲斐あって、結果的に市に買い取られ保全が決まった台峰緑地を散策(山登り)しました。台峰は東京・横浜から比較的近いにもかかわらず立派な自然が残された山で、これが保全されたことで北鎌倉は静かで自然豊かな環境が保たれることになったとのことでした。観光地化された鎌倉とは違って、北鎌倉は自然豊かで素朴なところだったので、個人的には北鎌倉が気に入りました。こんなところに家を買って住めるとさぞかし気持がよいだろうと思ったものです。
 このような環境セミナーも修習制度の変化により来年が最後になるかもしれないという話を聞きました。修習生がこのような興味深い企画に参加できる機会が無くなってしまうことを残念に思うとともに、最後は是非、籠橋先生念願の環境セミナー@軽井沢が実現されますことを願っております。