『尼崎ひと・まち・赤とんぼセンター』4年の到達点
センター赤とんぼ事務局長  淺野弥三一 (尼崎南再生研究室室長)


センター赤とんぼ4年の到達点
 尼崎公害患者・家族の会は、阪神大震災翌年の1996年に、「後世に残そう美しい運河のまち−尼崎南部再生プラン」を作成、発表した。
 それは、(1)現代史の記憶をとどめるまち、(2)福祉・健康づくりを促進するまち、(3)自然と暮らしと産業が調和するまち、(4)住民主体のまちづくりの4つを基本方針に、以下の5つの重点プロジェクトの推進を掲げています。
 (1) 国道43号・阪神高速道路大改造プロジェクト
 (2) 運河交通網と新「ベネチア型」住宅街の整備
 (3) 健康回復センターの新設と新時代型産業の育成
 (4) 尼崎新山の整備
 (5) "尼いも"再生プロジェクト
 これらの構想は、尼崎公害訴訟の企業、国・公団との和解を契機に、5年目を迎えるセンター赤とんぼの活動が、着実に定着と広がりを見せています。(1)は国・公団との大型自動車低減のあっせんを受けて、連絡会も公開され、具体策の検討が進められようとしています。(2)は尼崎南部再生研究室(あまけん)が南部地域の市民のまちづくり活動拠点として歩みだしており、(3)はセンター赤とんぼでの様々なグループによる研修活動を通した健康づくりと生きがいづくりが定着、(4)は、兵庫県が進めている21世紀の森づくりに協力する方向で考えています。また、50年ぶりの「尼いも」の一種を昨年復活させることができました。

「尼いも」復活
 「尼いも」復活への取り組みは、苗の入手から4年を経て、ようやく"四十日藷"もその一つであることが確認できました。この間、以前に栽培していた方や食べた経験を有する人たちの協力で、自作の種芋から苗をつくり、昔なつかしい、しっとりとした甘さのサツマイモとして復活させることができました。  他に"尼ケ崎赤"といつた品種もあったようですが、40日藷と同じように、種芋を保温した芋床に寝かせても、発芽し苗に成長しなかったり、苗を植えても蔓ばかりで肝心の芋がならなかったり、壁にもぶつかっています。
 40日藷は、昨年約500本の苗を、市内の小・中学校14校と、約40人の希望者にも最小限ですが苗を配り、栽培していただけるようになりました。
 また、市内のホテルやレストランでも、8月に尼いもをテーマにした食事会が開かれるなど、多様な展開への兆しがうかがえます。
 一方、情報発信のために、尼いもに関するこれまでの情報を集約した「尼いもの本−絶滅編」や、小・中学生を対象にした絵本「僕はアマイモ」を出版し、市内の図書館をはじめ、全ての市立の幼稚園・小学校・中学校にも配本し、白井市長からの感謝状をいただいたりしています。
 これらの活動は、平成14・15年度の地球環境基金助成を受けて、センター赤とんぼの事業として、尼崎公害患者・家族の会の有志も参加する「尼いもクラブ」が進めています。患者会のメンバーにとっても、屋外での研修活動の一つとして、苗の植えつけ、芋の収穫など顔がほころびます。
 今年は、苗と芋の栽培を拡張し、次へのステップを図っていきたいと思っています。

あまけんの活動
 あまけんは、センター赤とんぼから少し離れたマンションの一階に開設して4年目を向かえ、活動の方向、ネットワーク、支援体制など、活動の土台ができてきました。
 開設後発行していたニュース「南部再生」は10号を一節にして、保存にも耐えるブックレットタイプに変更すると同時に、それまでの2,000部から5,000部に増刷し、市内公共施設をはじめ、90箇所での配布体制ができました。
 活動内容も、一応の予備活動を経て、今後は継続的に市民の協力や支援の得られるように努力しています。
 昨年は、尼崎の中心商業地である中央三和出屋敷商業地区まちづくり協議会主催で、兵庫県の生活復興県民ネットの助成事業「メイドインアマガサキ・コンペ」を支援し、尼崎にこだわる商工業製品の発掘、発見に努めました。その結果、特殊な技術が集約されている"湯たんぽ"と、かまぼこなどの"練物"がグランプリに選ばれ、また、商店街の空き店舗活用という点からも、周囲の商業者にも比較的暖かく受け止めていただけたように思います。この事業は、兵庫県阪神南県民局や尼崎市をはじめ、尼崎商工会議所、阪神シティケーブル、エフエムあまがさきなどの後援と関西学院大学総合政策学部片寄研究室の協力、という条件を整えることができました。今年は、それらを発展的に展開しようという雰囲気が作られつつあります。
 こうしたあまけんの活動は、若いメンバーが主に担っていますが、その周りにさまざまな支援の輪が徐々にではありますが広がってきています。

 センター赤とんぼは、こうした活動の他、国・公団との連絡会への対応なども含め、当面する課題と共に、今後の新たな展開を視野に、土台としての役割の重要さを認識していきたいと考えています。