圏央道あきる野土地収用事件

声   明



 東京地方裁判所民事第3部(藤山雅行裁判長)は,本日,あきる野市牛沼地域の圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設事業に関する東京都収用委員会の収用裁決(2002年9月30日)にもとづく代執行に対し,これを停止する旨の決定を下した。現在,同収用裁決については,起業者(国及び日本道路公団)の申立にもとづき東京都知事による代執行手続きが進められているが,本決定は,地権者らが提起した収用裁決取消訴訟の第一審判決言い渡しから起算して15日後までの間,同裁決にもとづく代執行の停止を命じ,住民無視の行政のあり方に歯止めをかけたものである。
 そもそも,起業者は,建設目的が失われ道路公害を激化させるなど事業計画に明白かつ重大な欠陥があるにもかかわらず,圏央道建設のための土地収用手続きを進めてきた。しかも,本案である収用裁決取消訴訟は,2003年12月までに証拠調べ手続きを終了して04年2月には弁論を終結することが予定されているにもかかわらず,起業者らは,地権者らの事情を無視して,本年6月には行政代執行を申し立てた。そして,本案訴訟の結論をあえて待たずに,明け渡し収用を強行しようとしてきた。
 しかし,本件収用を強行しても,建設・開通する道路はわずか1.9キロメートルに過ぎず,そこに設置されるあきる野インターチェンジによっても,道路混雑が改善されないばかりか逆に混雑が激しくなるなど,公共上の利益に結びつくものはほとんどない。のみならず,同インターより先の南側予定地は,未だ工事中で,大量のダイオキシンの放置,井戸涸れ,水涸れなどのために,開通する見通しが立っていない。土地収用を強行し,道路建設を進めなければならない緊急性は何ら存在しない。
 逆に土地収用を強行すれば,病気入院中の地権者居住家屋も破壊され,土地が造成されて,取り返しのつかない損害が生ずる。古墳などの文化遺産も破壊される。
 本日の決定は,地権者は,憲法上の保障された居住の自由にもとづき人格権の基盤をなす重要な利益を有するとし,このような収用裁決にもとづく代執行を強行することは回復できない損害があること,他方公共の利益に重大な影響を与えないことを認めて執行停止を決定したものである。決定は,地権者らに対して強制立ち退きをひたすら求める起業者らの非人道的な対応を断罪するとともに,本件事業や収用裁決そのものに対しても,重大な疑問を提示している。
 この決定は,無駄な公共事業に対する国民の批判を反映したものであり,道路公害をはじめとする公害反対や環境保護を求めている全国の住民の運動を大きく励ますものである。 起業者及び東京都知事は,この決定に従い,執行手続きを一切停止し,圏央道計画そのものの見直しを検討するべきである。
 地権者らは,事業認定及び収用裁決そのものの違法性をいっそう明らかにし,本案訴訟で,これらの取消を実現するべく,さらに奮闘する決意である。
2003年10月3日
圏央道あきる野土地収用事件地権者関係人一同
圏央道あきる野土地収用事件弁護団
牛沼土地収用反対裁判を支える会