尼崎公害あっせん合意についての声明



 本日,いわゆる尼崎道路公害訴訟に関し大阪高等裁判所で成立した訴訟上の和解にかかる「和解条項の履行を求める」あっせん申請について合意が成立しました。
 尼崎道路公害裁判の国・阪神高速道路公団との和解は,神戸地裁における四半世紀振りの差し止め判決にかえて「大型車の交通量の低減」に向けた「道路交通量調査」を実施し,この調査に基づき具体的な低減方策の検討を国に約束させるというこれまでの道路交通政策の転換をはかるものでした。ところが国(国土交通省)は,和解条項の履行について原告・患者,弁護団の意見を聞くことなく一方的に道路交通量調査を実施し,兵庫県警に「交通規制の可否」の検討を依頼するという不誠実な対応に終始し,本件地域における大型車の交通量の削減についての具体的方策を実行することを拒否してきたのです。
 本日成立した合意は,第1に,和解条項履行の過程で国が一方的に道路交通量調査を実施するなどしたことに問題があったこと及び調査内容が不十分であったことを認め,大型車の交通量低減のための総合的調査を実施すること,これを踏まえて大型車を対象とする効果的な交通規制実施の可否について「追加的検討」を警察庁に求めると言うものです。第2に,「連絡会」の運営を公開するなどして大幅に改善し,大型車の交通量を低減する観点で建設的且つ有効な意見交換を求める内容となっています。第3に,国土交通省及び阪神高速道路公団のみならず関係諸機関に対しても大型車の低減に向けて総合的な取り組みを積極的に行うことを要請しています。
 以上の3点はいずれもわれわれが和解条項の履行として求めてきたところであり,大型車の低減に向け大きく前進するものと確信します。
 我々は,あっせん申請後公害等調整委員会のあっせん合意に向けた尽力につき敬意を表するとともに,本日の合意を踏まえ,原告・患者の悲願である本件地域における大型車交通量の削減,自動車排ガスによる健康被害を根絶するまで闘い続けることを表明し,声明とします。

2003年6月26日
尼崎道路公害裁判原告団・患者会  松 光子
尼崎道路公害裁判弁護団      中尾英夫