〔2〕薬害ヤコブ病訴訟(大津訴訟)報告
薬害ヤコブ病訴訟(大津訴訟)弁護団


1 薬害ヤコブ病全面解決とたたかいの到達点
(1) 1966(平成8)年11月,大津地裁にわが国で最初の薬害ヤコブ病訴訟が提訴された。硬膜移植が原因で,CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)に罹患した患者谷たか子さんとその夫が,硬膜の輸入販売を承認(許可)した国とこれを輸入して販売した企業などを相手どって提起された損害賠償訴訟がそれである。
 その後,薬害ヤコブ病訴訟は東京地裁にも提起されたことにより,大津と東京の2つの裁判所に係属することになったが,提訴以来5年4月を経て,2002年3月25日,原告・弁護団と厚労大臣,被告企業らとの間で「確認書」が調印され,全面解決がはかられることになった。
(2) 同日,大津,東京両地裁で,判決対象原告について,和解が成立した。
 和解の内容は,(1)患者1人当たり一時金として平均6000万円を支払う,(2)国は全ての患者に対して,1人当たり一律350万円を負担する。(3)1987(昭和62)年以降に移植手術を受けた患者に対しては,350万円の外に一時金の3分の1を国が負担する,というものであった。これは,国の負担ですべての被害者の救済を実現するという点で,積極的な意味をもつものである。
 この第1陣和解で,11名の患者について和解が成立した後,大津地裁では順次,和解が成立していき,2003年(平成15)年3月3日まで,第2から第4陣の和解成立により更に合計6名の患者について和解が成立した。

2 大津訴訟の昨年一年間の経過
  •  2003(平成15)年3月23日,「薬害根絶の碑」除幕式・確認書調印1周年記念集会(於・大津市)
  •  2003年(平成15)年5月22日,第10次提訴(患者2名,提訴患者合 計31名)。同日大津地裁で第5陣和解成立(患者2名,和解金1億2160万円
  •  2003年(平成15)年6月8日,ヤコブ病サポートネットワーク第2回総 会(於・名古屋市)
  •  2003(平成15)年7月17日,第6陣和解成立(患者1名,和解金5780万円)
  •  2003(平成15)年1月3日,第11次訴訟(患者2名,提訴患者合計33名)。同日,第7陣和解成立(患者2名,和解金1億7240万円)
  •  2003(平成15)年11月12日,国際ヤコブデー集会(於・東京弁護士会館)
  •  2003(平成15)年12月11日,第8陣和解成立(患者4名,和解金2億5730万円)
  •  2004(平成16)年3月5日,第9陣和解成立(患者  名,和解金      万円)
3 この1年間のたたかいと今後の課題
(1) この1年間,弁護団は引き続き潜在患者の掘り起こしと追加提訴に取り組むとともに,未和解患者の早朝和解成立に向けて,奮闘してきた。ビー・ブラウン社をはじめ,被告企業らは,ヤコブ病かどうか疑わしい,硬膜使用の証明が不十分だ等々,様々な口実をもうけて,早期和解の成立を妨害してきたが,弁護団はねばり強い努力を積み重ねることによって,被告企業らの妨害をはねのけ,次々と和解成立をかちとり,未和解患者はあと残すところ6名となった。
(2) しかし,硬膜移植から発症まで期間が20年をこえるケースもあることから今後も発症する可能性のある患者も残されており,弁護団としても引き続き潜在患者の掘り起こしに取り組んでいく必要がある。このため,サポートネットワークを中心とした相談活動が引き続き重視される必要がある。
 また,薬害ヤコブ病の患者家族と遺族の精神的なケアーも含めてサポート活動をさらに充実強化していくことが重要であり,この点で,医師・研究者や看護師,メディカルケースワーカーなどとの連携協力が必要とされている。
(3) さらに,薬害ヤコブ病全国連として,薬害ヤコブ病裁判記録の編集・出版作業が取り組まれ,近く,「薬害ヤコブの軌跡」(上・下2巻)が完成し,日本評論社から出版される予定である。
 薬害ヤコブ病の教訓を多くの人々に伝え,2度とこうした悲惨な薬害を繰り返してはならないという警鐘を鳴らすことによって,薬害根絶に向けて引き続き監視を強めることは,今後の重要な課題である。