〔1〕 川崎公害裁判とまちづくり
川崎公害裁判弁護団


 1999年5月20日に川崎公害裁判の国(公団)和解が成立し,以後,川崎公害に係る公害根絶とまちづくりの課題は,和解に基づいて設置された国との「連絡会」を主要な土俵として議論されるところとなった(なお,川崎公害では,これと連動して関係地方自治体,各省の出先機関で構成する「検討会」が設置されている)。

1 不誠実対応への申入

 第5回「連絡会」は,2002年4月25日に開催され,原告団・弁護団は,国(国土交通省)・道路公団に対し,総量規制の根幹をなすものとして大型車規制の早期実施を求め,具体的には 1)主要幹線道路への全面的な大型車・ディーゼル車規制,2)大型車・ディーゼル車の居住地域の進入防止対策,3)大型車・ディーゼル車の交通規制実施のための警察庁との検討促進の要求を行なった。
 これに対し,国は原告団・弁護団等に「(国土交通省として)『川崎市南部地域道路沿道環境対策検討会』に前記大型車規制の問題を議題として提起し,検討する」ことを約束した。
 ところが,その後の経緯は,国の約束違反,不誠実な対応を示すに至った。すなわち,第6回「連絡会」は,2003年3月5日に開催された。その連絡会の冒頭,原告団・弁護団は第5回「連絡会」の確認事項の履行状況を質したところ,国は「検討会」に議題として提起し,誠実な検討を行なっていると回答した。一方,原告団・弁護団が,その後,「連絡会」事務局に議題内容の情報公開を求めたところ,国は,約10ヶ月間にわたって前記約束は棚上げし,ようやく2003年2月12日の検討会に「川崎南部地域における『大型車対策の検討について』」と題して議題を提出する」に至ったことが判明した。つまり,3月5日の「連絡会」開催を目前にして,その直前の2月に(正確にいえば3週間前)に帳尻りあわせとしてその議題の提出を行なったことが明らかとなった。
 これは,裁判当事者として誠実に和解内容を履行すべき義務に違反し,しかも,連絡会協議の確認内容をも反古にするもので,国として誠実に連絡会協議を行なっていないことを示すものであった。
 そこで,原告団・弁護団は2003年4月末日に国・公団に対しその不誠実対応に抗議し,あわせて下記のとおりの再要求の申入を行なった。

2 総量規制等の再要求

 原告団・弁護団が行なった再要求は,次のとおりである。
(1) 川崎南部地域において,大気汚染は川崎南部,北部地域にまで拡大,進行し,ぜん息患者等被害者が多数発生している。川崎市全域にわたる環境基準の達成は,一刻の猶予も許されない。
 この間,国等の行なう対策は,自動車交通量の総量規制に背を向け,道路環境整備対策の名の下に,交通量のネットワーク整備に重点をおき,これに加えて環境設備や騒音対策等の道路構造改善を行なうというもので,前記和解条項で確認した交通負荷の軽減のための交通量の抑制,ロードプライシングの実施などの対策は先送りの状況となっている。
 この間,神奈川県は,「ディーゼル規制条例」を制定し,その具体的施策を進めているが,その場合においても平成22年(2010年)度でNO 測定で2局,SPM測定で4局が,環境基準を達することができないとしている。その測定局に,本件地域の測定局が含まれていることは神奈川県自身認めるところとなっている。
 また,国土交通省の社会資本整備審議会道路分科会中間報告は,「今,転換の時―よりよい暮らし・経済・環境のために―」と題して,「一定量のストックは形成された。渋滞・事故・環境など解決すべき課題がある」との現状認識を行い,需要予測・利用交通量,料金収入や事業コスト,効率性などに重点をおく従前の道路行政の誤りを認め,改革の方向として,1)評価システムによる峻別と集中的重点設備,2)既存ストックの有効活用・効率化,3)「公」の意義に基づく新たなパートナーシップの確立をうたった。そして,環境の保全・創造を3つの政策目標の一つに掲げ,沿道環境改善のために,自動車交通量を抑制するためのロードプライシング,交通需要の調整・抑制策を推進すべきとした。
 東京都の平成13年度行政評価結果「道路交通の円滑化を図る」も,自動車交通量については,「交通容量を増大させれば,その増大に伴い誘発交通を生じさせる可能性がある。道路ネットワークの整備やボトルネックの解消の推進とあわせて交通量の抑制に向けて抜本的施策である交通需要マネージメント(TDM)の推進・ロードプライシングの実現に向けた合意形成」などが必要であると提言するに至った。
(2) これらの政策,提言は,川崎公害裁判における和解内容の実践とも合致する。
 川崎南部の高濃度大気汚染によるぜん息等公害患者の多発地域の道路沿道環境・大気汚染改善のためには,ロードプライシングや大型車乗り入れ規制等による交通総量規制を早急に行なう必要がある。そこで私たちは当面する緊急の課題として,直ちに以下の項目を実施するように要求する。
  1.  川崎南部地域における効果的な「ロードプライシング」,「大型車・ディーゼル車の乗り入れ規制」を行なうこと。
  2.  和解条項,道路分科会中間答申等に基づき,患者・住民参画による川崎南部地域の交通総量抑制の取り組みを行なうこと。


3 尼崎あっせん後の展開

(1) 西淀川,川崎,尼崎及び名古屋の4つの裁判和解でいずれも前記趣旨の諸施策をとらせるため「連絡会」が設置された。しかし,連絡会における国側の対応は,どの地域においても不誠実で連絡会の場で公害根絶とまちづくりの課題を推し進めることには相当の困難が現出した。
 こうした情勢のなかで,尼崎では公害等調整委員会にあっせんの申立を行い,2003年6月にあっせんの合意が成立した。大気全国連は,この尼崎のあっせん合意を契機に反転攻撃に打って出ることを確認し,尼崎のあっせん合意を所与の前提として和解内容の実現をめざして,2003年秋を目途に各地で連絡会開催を行なうことを確認した。
 川崎でも大気全国連の方針(確認)に従って直ちに行動を起し,同年7月に国・公団に対し以下のとおりの決意をこめた強い申入を行なった。
(2)
ア 尼崎公害のあっせん合意の内容は,「第1に,和解条項履行の過程で国が一方的に道路交通量調査を実施するなどしたことに問題があったこと及び調査内容が不十分であったことを認め,大型車の交通量低減のための総合的調査を実施すること,これを踏まえて大型車を対象とする効果的な交通量規制実施の可否について『追加的検討』を警察庁に求めることを提起し,第2に,『連絡会』の運営を公開するなどして大幅に改善し,大型車の交通量を低減する観点で建設的かつ有効な意見交換を求める内容となっている。第3に,国土交通省及び阪神高速道路公団のみならず関係諸機関(県市等)に対しても大型車の低減に向けて総合的な取り組みを積極的におこなうことを要請」している。
イ そうだとすると,川崎の場合にあっても国等に求められていることは,尼崎あっせん合意を新たな到達点として真摯に受け止め,自動車排気ガス公害をなくすための抜本的,効果的な対策を講じることである。さらに国の責任において,P.P.Pの原則(汚染負担の原則)に基づく被害者救済制度の創設が緊急の課題となっていることを肝に銘じ,その実施のための具体的な段取りを講じることである。
としたうえで,
  1.  川崎南部地域を走行する国道1号,15号,409号,川崎縦貫道,産業道路,横羽線を対象に効果的な「ロードプライジング」「大型車・ディーゼル車の乗り入れ規制」をおこなうこと。
  2.  和解条項,道路分科会中間答申に基づき,患者・住民参画による川崎南部地域の交通総量抑制の取り組みをおこなうこと。 (以上は,従前要求と同じ)
  3.   尼崎公害あっせん合意に基づき,「連絡会運営の円滑化」を図ること。
  4.  道路公害の原因となる新たな道路建設や道路拡幅をおこなわないこと(高速川崎縦貫道1期工事の中止,2期工事の断念。国道1号線拡幅計画の撤回)
  を要求した。
 そして,新たな状況を踏まえて,第7回の連絡会を遅くとも9月中に開催することを求めた。
 この申入後,国との事前打合せを経て,第7回連絡会は,2003年10月30日に開催されるところとなった。
ウ そののち,原告団と弁護団は,要求項目をより実践的なものにするための検討を行ない,前記要求内容を次のとおり具体化し,国(公団)に事前申入をした。

  1.  前回(2003年3月5日)以降の和解内容の履行に係る報告を受けたい。
  2.  総量規制(大型車の交通量削減)のための総合的調査の実施と具体的対策に係る進捗状況を説明されたい(尼崎あっせんの内容とも関連して)。
    • 高速湾岸線と高速横羽線の料金格差制度導入後の実績について
    • 全面的なロードプライシングの実現について
    • 「川崎南部地域沿道環境対策検討会」での討議とその履行状況について(3月5日以降)
  3.  国道409号・川崎縦貫道建設に係る進捗状況とその計画につき説明されたい。
    • 1期残工事の即時中止について
    • 2期以降の工事断念について
  4.  国道1号線の拡幅問題の現状につき説明されたい。
    • モデル工事の即時中止について
    • 交通量調査,アセス評価,健康影響評価について
    • 拡幅計画の中止について
  5.  資料請求 下記の資料については,連絡会の開催に先だって情報公開されたい。  (ア)
    1.  川崎縦貫道に設置が予定されている大気汚染対策に係る装置(いわゆるトンネル脱硝装置)につき,その規模,容量,能力(吸入排気ガス総量,浄化率・量,交通量,換気塔及び脱硝装置の大きさ等)について
    2.  同連続運転可能日数(無休連続運転か否か),触媒再生方法,最盛時の脱硝運転の可否について
    3.  同換気塔の電気集塵機の能力,容量(SPM吸着量,吸着可能な粒子の大きさ等)について
    4.  導入予定時期,導入場所,前記路線以外の導入予定路線について
    5.  前記装置に係る一切の資料
    (イ)
    1.  和解条項記載の産業道路の車線削減前後の交通量調査結果について
    2.  産業道路の緑化対策,その他の公害環境対策の進捗状況と今後の対策の内容について
   さらに,原告団・弁護団はこの内容を再々度検討し,連絡会直前の打合せで10月30日当日の議題を次のとおり確定し,提案した(最終確定)。

  1.  国土交通省は,川崎市川崎区及び幸区地域(以下,本件地域という)における大型車の交通量低減のための施策を総合的かつ効果的に進めるために,事業主団体等の協力を得て,大型車の運行経路,運行経路選択要因等に加え,大型車の運行実態(頻度,時間帯等),車両の年式,ディーゼル微粒子除去装置装着の有無,環境ロードプライシングの全面展開並びに施行内容の充実や交通規制が実施された場合の運行経路選択に係る意向等に関する別紙調査(略)を実施すること。
  2.  湾岸線に接する国道357号線(大黒埠頭〜羽田空港)の建設に着手し,完成させること。
  3.  道路公害の拡大を招く高速川崎縦貫道の1期残工事,2期計画を中止し,国道1号線の拡幅計画を撤回すること。

 「別紙調査」内容は詳細にわたるので省略するが,その内容は,尼崎のあっせん内容,あっせん後の尼崎と国との連絡会協議内容を基礎として,これを具体的に川崎版として展開したものとなっている(但し,川崎では対象道路が,尼崎や西淀川の対象道路が主に国道43号線と阪神高速道路2つの幹線道路にしぼられるのに対し,川崎判決の基準に照らして12時間値の自動車走行台数1万台以上として捉えたため,多岐,多数にわたっている)。

4 10・30連絡会とその後の状況

(1) 10月30日の連絡会は,官僚特有の慎重発言,責任回避発言にあい,予定時間をオーバーして進められたが,当日の主要課題であった「別紙調査」の実施については概ねの同意をかちとることができ,しかも,その調査設計にあたっては事前に,すなわち,コンクリート状態になる前,また,コンサルタントに外注に出した場合でも随時原告団・弁護団と協議を行ない,その同意を得た内容で行なうことが確認された。
 これをうけて,国の外コンサルタント業者も参加して,11月及び12月に2回の前記協議が行なわれ,2004年1月にもその協議が予定されている。
(2)  2回にわたる協議では
ア 調査設計のために事前にグループインタビューによる意義調査を行なうこととし,1)グループインタビューの目的,2)その目的,3)その方法について協議が行なわれ(継続討議)
イ 同時に,本調査である「アンケート調査」についても 1)アンケート調査の目的・内容,2)その方法,3)対象事業所,4)アンケート項目ひとつづつの検討が行われた(継続検討)。
 国が現在考えている調査は,走行車量の方向別調査は別途の調査結果があるのでこれを使い,今回の調査はナンバープレート調査を中心に行なうとし,広域的なロードプライシングをも念頭において10ヶ所(交差点),うち首都高速道路公団国道が2ヶ所,川崎市関連が4ヶ所,国道のみの交差点が4ヶ所で,対象事業所は,「川崎南部地域内の事業所でも起終点とその経路」調査をすれば,近接する横浜市側及び東京都側の事業所も視野に入れることができるとの「判断」から川崎南部地域内事業所にしたいというものとなっている(但し,ディーゼル車規制逃れのため,その大型車の事業所登録を規制外の例えば,千葉,埼玉にし,一番ひどい名古屋でいえば三重や岐阜に登録したりしているのであり,また,経路(ルート)調査をしたとしても不完全・不十分で,従って川崎南部地域に限定していいかどうかはやはり問題が残っている。いずれにしても,対象事業所のしぼり方,対象数,規模のつめも課題となっている)。
 ともあれ,裁判闘争で担ってきた分野と比較して原告団・弁護団としては多くの点において初めて経験する分野の議論のため,ない知識をしぼりつつこれに対処し,また,各地,とりわけ尼崎の実践例を最有効活用する視点から,取り組みを強化しているところである。

5 その他の課題

(1)  国道15号線(京浜第一国道)の道路構造の改善と緑化対策・周辺対策は,原告団・弁護団(科学者チームの協力)の意見を徴して,概ね当方構想に近い内容で一歩づつ前進している。ちなみに全体工事の約4分の1の区間に相当する東京寄り区間には,約4,000本の木が新たに植樹され,中央分離帯の削減,自動車道・歩道の峻別,拡充という外形的改善とともに,「森のような」道路づくりをめざした取組みが進行している。この第1区画に対応する位置に川崎市の稲毛公園があり,ここの緑化対策も,川崎市の協力を取りつつ進もうとしている。また,次年度から第2区画の工事が進行するが,原告団・弁護団はこの区間のメインである旧川崎市警察署前交差点周辺の緑化対策も視野に入れて今,具体的な検討を進めている。
 このほか,ポケットパークの新増設,クリーク等水まわり施設や,文化的施設・展示場の設置,モニュメントの築造(これは約束済み)等々,あと2年で「箱根駅伝」での川崎の絵柄が変わったと実感させるような取り組みが着々と進行している。
(2)  幹線道路の拡充,新設反対の課題は,国道1号線(京浜第2国道)の拡幅問題は依然として緊張関係を保ったまま,国と住民側の対立が続いている。小田,浅田線拡幅問題も同様な対立が続いている。
 しかし,いずれも50年前に計画決定されたその案が,何ら今日的見直し(「時のアセス」)もなしに,住民合意のない形で強行されることは許し難いものであり,住民の団結した力でこれをはね返すことが重要となっている。
 また,川崎高速縦貫道問題も,前述した要求内容から明らかのとおり,ひきつづく重要課題となっている。当初見込(3万台)の約3分の1しか自動車走行台数がないアクアラインの受皿としての川崎高速縦貫道の設置にその必要性は見いだせない。しかも,川崎区から新川崎(旧新鶴見操車場跡地),武蔵小杉,武蔵溝口の各再開発地域をつなぎ東名高速道路に連結するとした基本構想は,経済の行き詰まり,ムダな公共事業批判の前に各再開発計画は大きく見直され,その結果川崎高速縦貫道の必要性も,意義も消失した。これ以上,当初予算でさえ税金の無駄遣いであるうえにこの予算の3倍も4倍も浪費する(「過大アセス」。他方で,予測交通量のに対し3分の1の現実交通量,すなわち「過小アセス」)この高速道路計画に正当性は存在しない。今や1期工事の即時中止,2期工事以降の断念と既工事部分の残務処理を適切に行なう時期にきているといってよい。
 ところで,幹線道路の推進が,前記のとおり行き詰まる中で川崎市は,神奈川県,横浜市と連携して,「産業の空洞化」をつづける臨海部の活性化,再開発の1つの柱として羽田空港の東京湾沖拡張計画(AないしC滑走路に加えての第4の滑走路作り。国際空港化計画)に関連して,川崎市側に羽田空港の「神奈川口」を設け(出入国管理機能をもつ施設の設置等),それにリンクしての幹線道路の延伸,拡幅を行なうとの計画を打ち出すに至った。前記羽田空港の拡張により東京都には大きな経済的利益が「計算」でき(その結果,東京都はこの計画に1,000億円を無利子貸付),他方,神奈川県側は現状では何も期待できないが,「神奈川口」の開設があればその期待がもてるとして,「神奈川口」設置を条件に300億円(川崎市,神奈川県,横浜市で各100億円)を無利子貸付すると条件提示し,2003年年末にその合意に達した(2月上旬に国と3自治体の協議会が,発足予定)。
 ところで,川崎公害和解のなかに和解の妥協部分,すなわち弱点部分として「道路のネットワーク整備」がうたわれ,その具体策の1つとして,当時原告団・弁護団として余り意識していなかったものとして「殿町夜光線の延伸(産業道路のバイパス)(・期)」という計画がもり込まれていた(但し,原告団・弁護団は,その後の現地調査や連絡会,検討会を通じ産業道路に近接する道路計画の推進は,クルマを呼び込むだけで大気汚染を集中させるとして反対表明はたえずしていた。しかし,具体的反対運動の展開には至っていない)。
 また,このことと何らリンクしないかのように「国道132号線 夜光交差点右折レーン延伸(平成10年度着手,平成11年 度完成)」も盛り込まれていた。これは,国道132号線と殿町夜光線(この道路は,東京側にも横浜側にも現在はつながっていない。道路計画はあるものの現在道路としては川崎区内のみの道路)の交差点改良のことで,コンビナート地帯から来る主に大型車を右折(東京方面)しやすくする改良工事であった。改良工事実施後の現地調査で原告団・弁護団はその先に前記計画があることは知らず,なぜこんな部分改良が必要かといぶかしがっていたが(今からすると川崎市は現地調査でこのことを隠して虚偽説明),今回の「神奈川口」設置と符合させてみるとその位置づけ,意味が明白になってくる。
 羽田空港敷地内のルートはどのようになるか不確定であるが(現在,行政があれこれ言っている案は,目つぶしの可能性あり。情報通の話によると,未だ公表されていないが本命は,羽田内移送の貨物輸送用の地下道にリンクするのが最有力とのこと),「神奈川口」は殿町夜光線の多摩川・川崎側に設置し,そこから橋又はトンネル(結局は費用対効果の関係で多摩川は橋で通し,そのうえで,前記トンネルにつなげるのか)で羽田へつなげ,他方,将来の展望として長年にわたって凍結していた同線の横浜側への延伸計画を強行してくるものと想定される。ちなみにこの延伸計画にあっては,ルート上,旧NKK(日本鋼管)水江製鉄所の内陸側敷地の買収が必至で,旧NKKの福山への一部移転,もしくは福山集約とリンクしたもので,川崎の臨海部再開発の中核を担う可能性を有している。この関連で和解条項のなかに「市道さつき橋水江線 第二海底トンネル(・期)」の計画も盛り込まれていて,同線は,まさに水江製所直近交差点で殿町夜光線と交差し,さらに,それを直進して「第二海底トンネル」を突き抜けて,FAZ,KCT等川崎市が臨海部開発の目玉開発(但し,いずれも当初計画どおりには機能せず,ムダな公共事業批判の強い開発)が位置する東扇町埋立地に連なり,川崎市としては批判の強いこの地の活性化を狙っているところである(ちなみに,この第二海底トンネル問題は,川崎市港湾審議会ですでに審議が開始され,但し,費用対効果の関係でトンネルでなく,橋でつなぐ方式が有力視されている)。
 いずれにしても,臨海部再開発とからみ,そして羽田空港再拡張,川崎市,横浜市側臨海部の活性化(横浜市高島町から川崎臨海部を通って,東京へ抜ける貨物線の「有効活用」は,当然,至近の日程となってくる)ともあいまって,川崎での「道路ネットワーク整備」に対する取組みは,いよいよその重要性を増してくるように思われる。