第一 公害・環境をとりまく情勢


一 平和をめぐる動き

 2003年3月20日、米国ブッシュ政権は、英国とともにイラクに対する軍事攻撃を開始した。大量のミサイルと爆弾、とりわけクラスター爆弾・劣化ウラン弾などの残虐兵器も大量に投下され、イラクの国土は破壊され、多数の市民・兵士が犠牲となった。米英の圧倒的な軍事力による先制攻撃によってフセイン政権は崩壊したが、その後も軍事占領と治安維持のための軍事行動が展開されており、これに対するイラク国民の反発も強まっている。
 一方、米英のイラク攻撃にいち早く支持を表明した小泉内閣は、昨年(2003年)の通常国会で有事三法とイラク派兵法を強行成立させたうえ、本年(2004年)早々、イラクに対する陸海空自衛隊の派遣を強行した。
 しかしブッシュ政権がイラク戦争の最大の根拠とした大量破壊兵器を見つけ出すためイラクに派遣され捜索にあたってきた米イラク調査グループのデビット・ケイ前団長・前米CIA特別顧問は、米上院公聴会で、開戦前にイラクには大量破壊兵器がなかったことを証言した。これにより、ブッシュ政権のイラク戦争の大義は大きく揺らぎ、同政権の主張をうのみにして米国のイラク侵略戦争を支持した小泉内閣の責任が厳しく問われるところとなった。
 言うまでもなく、今日のイラクへの自衛隊派遣は、現に戦闘が行われている外国領土に、戦後初めて自衛隊を派遣するもので、日本国憲法を真正面から踏みにじる暴挙であり、アメリカの一国覇権主義に反対し、国連憲章にもとづく世界平和秩序を求める諸国民の願いに根本から背くものであり、断じて許す訳にはいかない。
 こうした中、憲法は戦後最大の危機を迎えている。自民党は2005年11月の結党50周年までに改憲案のとりまとめを決定、憲法改正のための国民投票法案を、通常国会に議員立法として提出する方針を固めており、公明党も、具体的に9条と前文について議論し、参院選前に改憲論議の論点整理を行う方向を打ち出し、民主党も、今年(2004年)末をめどに独自の改憲草案をまとめる方針を決定した。まさに明文改憲への動きが加速的に強まっている。

二 小泉改革と新たな流れ

  丸3年を迎えようとする小泉内閣は、倒産と失業がいよいよ激化する中、来年度予算で計上された3兆円を含め合計7兆円にものぼる国民負担増を強いる一方、年金制度の大改悪、消費税増税など国民の暮らしに重大な打撃をあたえる施策が目白押しとなっている。
 その一方で大型公共事業に対してはいぜんとしてメスが入っておらず、無駄で有害な高速道路建設の構造を温存した道路公団改革や都市再生の名のもとに巨大空港、港湾、高速道路網への予算を大幅に拡大した来年度予算にみられるように従来型の公共投資重視の姿勢を一切変えようとしていない。
 しかしこれに対し、ダム関係では、長野県で浅川ダム・下諏訪ダムなど8つのダム事業の中止が確定的になったのをはじめ、2003年12月には群馬県戸倉ダムが、国・水資源機構のダムとして初めて中止となるなど大きな変化が生まれており、原子力発電所の新増設をめぐっても、2003年12月に石川県の珠洲原発・新潟県の巻原発が相ついで凍結・断念されたのをはじめ、地元住民の運動の中で、2010年度までの政府の新増設計画が半減される見通しとなってきている。また、沖縄の普天間基地の返還にともなう新基地建設問題でも、ジュゴンの生息する貴重なサンゴ礁破壊に反対する運動の中、米側が普天間基地返還を新基地建設の条件としない意向を伝えるなどの動きが生まれており、各地の粘り強い取組みの中で新たな流れが生まれてきている。

三 司法をめぐる情勢

 2001年12月の司法改革推進本部以降3年の期限付きの2004年12月まで1年を切るところとなり、立法化作業に向けての最終ラウンドのたたかいにさしかかろうとしている。
 この間、裁判の迅速化・充実化、裁判官制度改革、裁判員制度、行政訴訟改革、そして弁護士報酬敗訴者負担制度などをめぐって、市民の側からの司法改革要求と規制緩和路線を強行しようとする政財界と動き、官僚司法温存の最高裁の動きのせめぎあいの中で立法化に向けた作業が急ピッチで進められてきた。
 このうち行政訴訟改革では、機能不全に陥っていた行政訴訟につき、国民主権に根ざした司法の行政に対するチェック機能の抜本的強化が求められていたが、原告適格の拡大、義務付け。差止訴訟の法定、確認訴訟の明記などが盛り込まれる見通しではあるが全体として不十分なものに終わっている。
 一方、弁護士費用敗訴者負担制度をめぐっては、推進本部検討会において、制度導入派が多数を占める中、日弁連と全国連絡会に結集する国民世論の力でこれを押し返し、原則導入の多数派意見を前提としつつ、行政・労働・人事・人身損害の各訴訟は例外として導入すべきでないとの意見が多数を占めるところとなり、昨年(2003年)夏のパブリックコメントでは導入全面反対の意見が大多数を占めるにいたった。
 これに対し推進派ないし事務局から、突如、「合意論」が提起され、現在「裁判上の合意による敗訴者負担」導入の方向で立法化作業が強引に進められようとしている。今後は通常国会における導入断固阻止のたたかいに舞台を移し、なおいっそうの奮闘が求められている。