3) 2つ目の課題については,そもそも全国に散らばった被害者がどこのだれであるか,いっさい不明だという問題がある。厚生労働省が把握した100名余の被害者について,その家族さえも,知らされていないことが問題であった。
確認書調印以降の原告団・弁護団のねばり強い働きかけにこたえて,厚生労働省側も,被害者の家族に対する情報提供に相当に力をいれて取り組んだ(諸般の状況からみて,そう考えてよい)。
もちろん,提訴済み被害者がふえてきた要因はそれだけではない。被害者家族が弁護団(司法救済)にたどりつくには,さまざまなケースがある。とりわけ良心的な医師をはじめ,多くの方々の努力の成果であることを強調しておかねばならない。
(2) 琵琶湖畔に「薬害根絶の碑」を建立
「こんな悲しい思いは,私たちだけでたくさんだ。2度と薬害の悲劇をくりかえしてはならない」それが,被害者家族たちに共通の痛切な願いであった。2年前の確認書で,被告企業らが支払いを約した金額のなかには被害賠償の和解金のほかに,「ヤコブ病被害者の慰霊,遺族・患者家族支援等」のためのお金がふくまれていた。
このお金をつかって,薬害の再発防止・根絶の願いを形に現して広く国民にアピールしようと,「薬害根絶の碑」が建てられることになった。場所は,滋賀県の琵琶湖の畔,絶景の地であり,琵琶湖を訪れたおおくの人々の目にふれるところにある。
「薬害根絶の碑」の題字は,坂口力厚生労働大臣の書による。2003年3月23日,その除幕式と「薬害ヤコブ病確認書調印1周年記念レセプション」がとりおこなわれた。
(3) ヤコブ病サポートネットワーク
ヤコブ病サポートネットワーク(略称ヤコブネット)は,わが国で初めて創設されたものである。ヤコブ病被害者をサポートする取り組み,すなわち被害者の家族からの連絡をうけて相談活動をおこない,専門家との連携をするネットワークである。
ヤコブネットは,2002(平成14)年6月に設立されて活動を開始した。
確認書では,「厚生労働大臣は,患者家族・遺族に対する精神的ケアを含む相談活動などの支援・援助事業を行うことを目的とする支援機構(サポート・ネットワーク)が設立された場合には,その活動に対する支援を検討する」と定められた。この確認書の具体化としての厚労省の支援を,確認書調印以降,求め続けてきた。
2003(平成15)年4月からは厚生労働省の予算措置が講じられることになった。
(4) 国際CJDデー
毎年11月の国際CJDデーにあわせて,2002年にひきつづき,2003年の終日行動を企画し,厚生労働省への申し入れ・交渉等をおこなった。
交渉では,薬害教育に対する取り組みの強化などもとりあげられた。
4 今後の課題
今後もひきつづき,未和解原告や未提訴被害者の早期救済等の課題にとりくむ。
そして,薬害の再発防止・根絶のために,他のたたかいと共闘し連携しながら,ねばり強い取り組みをつづけていきたい。