九州廃棄物問題研究会1年の歩み
弁護士 高橋謙一


1  昨年もまた、当会の最大の課題は、市町村あるいは組合など行政施行の焼却施設との戦いであった。
 行政は、その巨大な権力を元に、強引に工事を推し進める。やむを得ず裁判に訴えても、「行政上の機密」を理由に情報を一切明かさない。そして裁判所は、「行政の公益性」を理由に住民に過大な立証責任を押し付ける。という具合で、法廷闘争は困難を極めていた。それでも、当会のメンバーが全力を挙げ、少なくとも理論面においては、相手を圧倒しており、一定の展望も見えてきた。現在、メーカー技術者の敵性証人尋問を獲得すべく、裁判所で折衝中である。
 しかしそういう法廷闘争もさることながら、われわれは一昨年来、法廷外の運動に力を注いだ。その際たるものは、「ダイオキシン類連続測定機設置運動」である。現在は、年に1回4時間だけダイオキシン類を測定すればそれ以外のときは野放し状態である。そこで連続に測定できる機械を設置させることにより、守ればそれで良し、守れなければ裁判上の証拠として差止を認めさせようと考え、この運動を始めたのである。従ってこれは条件闘争ではなくて、安全な環境を得るための本質的闘争である。
 そういう中、我々の運動との直接の成果とは言いがたいが、ダイオキシン類連続測定機を設置する焼却施設もついに現れた。今後はそういう施設の情報を得ながら、行政を追い詰めていく予定である。

2  もうひとつ、法律違反の操業をしている安定型処分場において、操業停止、違反物の完全撤去、許可取り消しを目指す戦いも行ってきた。福岡県内の3つの処分場について、その周辺住民が一緒になって県と交渉し、県に住民の側に立った廃棄物行政をさせようと奮闘している。住民との話し合いを望まない県に対して、三つの住民団体が共同して申し入れることにより、どうしても応対せざるを得ないように仕向けた。また業者寄りの応対をする場合には、事実と理屈両面からきちんと住民が県を追及した。その結果、操業停止、違反物の一部撤去などを勝ち取っている。
 残念ながら昨年は行政に押し切られる場面も少なからずあった。そこで本年は、完全撤去・許可取り消しを勝ち得るために更なる戦いに臨む決意である。

3  また、これまではここの処分場の「撃破」という「局地戦」を中心課題にすえてきたが、昨年末より、ごみ弁連が主唱する「ゼロウエスト」「廃棄物を出さない社会つくり」にも遅ればせながら参加し、ごみ問題の抜本を変える研究も始めている。

4  このように、いまや文字通り、裁判闘争ではなくて、住民運動・政治運動による局面打開が要求されている。そこで、昨年同様、全国的に、運動を展開する必要があり、その戦略を現在検討中である。