第一 公害・環境をとりまく情勢


一 平和をめぐる動き

 米英軍によるイラク侵略から1年3ヵ月後の2004年7月,米上院情報特別委員会は,大量破壊兵器の脅威を明確に否定し,フセイン政権とアルカイダとの関与についても「証拠はない」との報告書を発表。英国政府調査委員会も,イラクの化学・生物兵器計画の不存在を報告し,イラク戦争が虚偽で塗り固められた侵略戦争であったことは,誰の目にも明らかとなった。
 しかし想像を絶する非人道的戦争は,2004年6月の統治権移譲後は多国籍軍に引き継がれ,ファルージャその他への反米勢力や無辜の民衆に対する軍事弾圧が続いている。
 一方,2004年1月から自衛隊本隊をイラクに派兵し,米英軍の軍事支援を続けてきた小泉政権は,6月,主権移譲を口実に,サマワの自衛隊を多国籍軍に参加させ,今なお国民世論に背き,自衛隊の撤退を拒否し続けている。
 こうした中,政府は2004年末「新防衛大綱」を閣議決定。これによって「海外活動」を自衛隊の「本来任務」とし,米軍との「共通の戦略」のもと,日米の役割分担を進めるとしている。
 こうした自衛隊の任務の大転換と連動して,改憲に向けた動きがいよいよ強まっている。この間の自民党の「改憲草案」から経団連の「提言」は共通して,自衛隊の海外での武力行使を認め,集団的自衛権の行使を明記せよとしており,米国も「9条改正が国連常任理事国の条件」と改憲の後押しを強めている。2005年秋までには改憲勢力の「改正」案が出揃い,次の国政選挙の2007年にも国民投票実施という危険な状況が迫っている。

二 小泉改革と新たな流れ

 小泉内閣は,定率減税の縮小・廃止をはじめとした種々の庶民増税と,年金・介護保険,雇用保険の保険料値上げなどの負担増で合計7兆円にものぼる国民大負担増を実行する一方で,年金・社会保障財源の確保と財政危機の打開を口実に,さらなる大企業の負担減を狙って,2007年をめどに消費税増税を企図している。
 その一方で巨大開発への浪費はいっこうに改まっておらず,来年度予算をみても,関西空港二期工事や巨大コンテナ港湾さらには高速道路網への予算は大幅に増額されており,従来型の公共投資重視の姿勢は,一切変わっていない。
 しかし,これに対しては,後にみるように,川辺川,有明海,さらには圏央道をはじめとした高速道路建設阻止など,巨大開発・環境破壊の公共事業の見直しを迫るたたかいが,積極果敢に取り組まれている。これに加え,昨年は,国交省が群馬県長野原町に建設中の八ツ場ダムをめぐり,首都圏の1都5県で有害無益なダムへの支出は違法として住民訴訟が提起され,又沖縄県名護市辺野古海域の新基地建設をめぐっても,ボーリング調査差止めの訴えが提起され,ジュゴンの生息する豊かな海を守るたたかいが取組まれるなど,各地で粘り強いたたかいが展開されている。

三 司法をめぐる情勢

 3年と区切られた最後の年を迎えた司法制度改革は,弁護士報酬敗訴者負担法を除いた全ての法案についてほぼそのままの形で可決成立し,司法制度改革は運用の段階に入った。この中で,不十分とはいえ裁判員制度が導入されたことは,頑迷な官僚的裁判制度に風穴を開けたものと評価でき,国民の司法参加と司法の民主化を進める足がかりとしていくことが求められている。
 一方,弁護士報酬敗訴者負担をめぐっては,突如として提唱された「合意論」が法案化されるという厳しい情勢のもとで,全国公害被害者総行動実行委員会に結集する公害被害者をはじめとした市民・労働団体と法律家団体・弁護士会の共同のたたかいのもと,2004年12月に臨時国会で見事廃案をかちとるに至った。政府提出法案が国会解散など特別な事情以外で廃案となったのは異例のこととのマスコミ報道にもあるとおり,希にみる画期的成果であり,この間の共闘の実践は,司法改革はもちろん今後のたたかいにとっての重要な教訓として生かしていく必要がある。