今年度は小松基地訴訟控訴審も審理に入った。2002年の地裁判決では、救済範囲の拡大を勝ち取ったばかりか、自衛隊機差止め請求についての適法性の壁を突破している。控訴審では健康被害調査を梃子として、平和で静かな空を取り戻す闘いに、さらなる前進が期待されている。
2 飛行差し止め獲得に向けて
新年度の最大の目標は、何より飛行差し止めの獲得である。
爆音が住民の睡眠を妨げ、健康被害をもたらし、人間らしい生活を破壊し、ひいては地域社会さえ破壊することは、裁判所の認定において避けて通ることのできない問題である。裁判所がこれ以上、この不正義を放置することは、到底許されない。
基地騒音裁判では、これまでとかく判決の獲得に力を注ぐあまり、運動面でのエネルギーに欠ける傾向があったことは否めない。差止め判決を獲得することが最大の目標としても、背景としての法廷外での運動を一層強め、裁判所の英断をバックアップする態勢なしには、判決の獲得は覚束ない。各地の訴訟団、弁護団の連携した運動こそが、今年度最大の課題と言える。
新嘉手納判決及び新横田判決は、こうした運動を強める絶好の機会であり、これを足掛かりとして政治課題に持ち込むほどの勢いが必要である。
3 在日米軍再編による影響と課題
アメリカ合衆国では、ブッシュ大統領が2期目に入ることとなり、これに合わせるように在外米軍の再編が急ピッチで進められている。無論在日米軍も例外でなく、更には自衛隊の再編にまで影響を及ぼしている。
東西冷戦構造に対応した編成から対テロ戦争への布陣へと再編が進められ、在日米軍基地の利用のされ方も自ずと変化を余儀なくされ、自衛隊基地を含む国内の基地のあり方自体が変化していくことは確実である。日本政府の対応はといえば、沖縄の負担の軽減を眼目の1つに据えているものの、その実は日本列島の総沖縄化であり、米軍専用基地から自衛隊との共用基地への変更が取り沙汰されている横田基地の例などは、地元市町にさえ情報が開示されないまま事は進められているのが実態であって、各地の基地周辺住民は「再編」の大波に翻弄されているのである。
こうした再編問題に対しても手を拱いているのではなく、各地の訴訟団、弁護団が積極的に情報を入手し、防衛庁、防衛施設庁、外務省、内閣府、更には各自治体に働きかけ、継続的に運動を展開していくことが必要であろう。