02(平成14)年12月から、廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシン類の排出規制が強化された。その結果、ダイオキシンの排出基準を満たせなくなり解体が必要となったごみ焼却施設は、全国で約600ヶ所以上に及んでいる。 ところが、解体費用が平均で2〜3億円、規模の大きい施設では10億円もかかるため、地方自治体は、解体を進めるための補助金制度の新設を求めている。しかし、環境省は、解体だけの補助金は認めず、解体跡地に新たな施設を建設することを義務付けているそのため、ごみ焼却施設の解体が進まず、放置されたままになっている。
3 崩壊の危機を内包するリサイクル制度
04(平成16)年4月、環境省と経済産業省は、03年度に指定引取場所で引き取られた家電4品目の台数が、02年度より3%増加して1046万台に達したと報告した。内訳は、テレビ355万台、冷蔵庫267万台、洗濯機266万台、エアコン159万台となっており、同省は、家電4品目の出荷台数が02年度比で8%減少したなかで、家電リサイクル法が定着しつつあると評価している。
ところが、03年度に不法投棄された家電4品目は、前年度比6%増の17万5000台にのぼっており、リサイクル料金逃れを図る消費者や料金を徴収しても処理に回さない業者が原因となっていると見られている。そのため、リサイクル料金前払い制の導入のほか、対象品目の拡大や有害化学物質の家電製品への使用禁止など家電リサイクル法の見直しが緊急の課題となっている。
日本包装容器リサイクル協会は、地方自治体から同協会に再処理を依頼されるペットボトルの量が、05年度は前年度比7.3%減の17万7000tになる見通しを示した。
ペットボトル自体の生産・回収量は増加しているが、リサイクル原料の需要が飛躍的に増大している中国において高値で売れるようになったため、地方自治体が同協会への無償引渡を中止し、独自に業者に売却するようになっている。ペットボトル選別のための人件費は、1kgあたり80〜100円といわれており、回収を進めれば進めるほど赤字を生む構造が問題となっている。同様の現象は、古紙、くず鉄相場でも起こっており、急速な経済成長に伴い大量のごみ資源を飲み込む中国市場の存在が、日本のリサイクル制度を崩壊の危機に追い込み始めている。
05(平成17)年1月からは、自動車リサイクル法も施行され、04(平成16)年10月から既に国内二輪車製造業者と輸入業者により自主的に二輪車のリサイクルも始められている。巨大な中国市場の存在を考慮しながら、従来のままリサイクル制度を維持するのか根本的な見直しが必要になっている。
4 各地の闘いの成果と課題
04(平成16)年9月、大阪府能勢町の豊能郡美化センターの土地所有者約60名が、センターを管理する豊能郡環境施設組合にダイオキシン撤去などを求めた訴訟で、土地所有者がセンター周辺でダイオキシンの無害化処理を行うことを了承し、組合が補償金4000万円を支払う内容の和解が成立した。汚染されたセンター跡地の環境復元にようやく目処がつき、能勢町ダイオキシン問題はほぼ決着した。
また、同年2月には鹿児島県瀬戸内町の一般廃棄物処理施設(鹿児島地裁名瀬支部)、3月には福岡県川崎町の安定型処分場(福岡地裁田川支部)、9月には福岡県筑穂町の安定型処分場(福岡地裁田川支部)、11月には福島県双葉町の管理型処分場(福島地裁いわき支部)などで建設・操業を差し止める裁判を住民が勝ち取っている。そのほか、4月には福井県池田町の安定型処分場について、福井県知事が設置許可申請に対する不許可決定を下している。
安定型処分場、小型の産廃焼却施設について、住民勝訴の事例が着実に積み重ねられているが、大型の管理型処分場及び焼却施設(自治体ないし第三セクター運営)については、ダイオキシン類・環境ホルモンなどによる汚染を理由とした住民の申立てが退けられている。
ダイオキシン類など将来の被害の蓋然性を立証するとともに、様々な工夫を重ね処分場や焼却施設の建設・操業を中止に追い込むことが課題となっている。