第三 公害裁判の前進と課題

六 国際交流の前進と課題


 2004年3月20日から21日、熊本学園大学において、「第2回環境被害救済日中国際ワークショップ」が開催された。これは、2001年9月に北京で開催された第1回ワークショップを受けてのもので、公害弁連は、熊本学園大学、日本環境会議、環境再生政策研究会、中国政法大学公害被害者法律援助センターとともに、第2回ワークショップを共催した。ワークショップには、中国から、学者、医師、弁護士、新聞記者、裁判官ら15名もが参加した。また、オブザーバー参加として、韓国からも、学者、弁護士5名の参加を得た。
 基調講演に続き、3つのセッション、パネルディスカッションという構成で、ワークショップ全体を通し、中国側から9本、日本側から4本の報告がなされ、それぞれについて日、中、韓の活発な質疑応答、討論が展開された。中国側からの報告は、中国における環境公害紛争の具体的事例紹介を中心に構成されていた。日本側は、事例報告と質疑応答を通し、日中の社会構造、法制度等の差異について認識を深めた。日本側の報告についての中国側からの質問も非常に活発で、激しく変動する中国社会において公害被害の抑止、根絶のために闘う法律家らの熱い情熱が示された。
 ワークショップに連続して3月21日午後に開催された公害弁連総会(及びシンポジウム)では、韓国環境運動連合の若い弁護士から、韓国セマンクン干拓工事差止訴訟と運動について、特別報告を受けた。シンポジウムの主題が「よみがえれ!有明海」であったこともあり、日韓の問題関心がかみ合い、ダイナミックに展開される韓国の運動から、参加者は大きな励ましを受けた。ワークショップ、総会終了後の懇親会でも、日中韓の参加者が、あちらこちらで輪を作り、活発に交流を深める姿が見られた。
 例年7月に実施されてきた韓国の司法修習生の日本における研修の受け入れは、今年度は実施できなかった。当初は実施に向けた日韓の準備が進められたが、韓国における司法修習制度が修習生の活動への制約を強める方向で改変され、修習生の来日が不可能になったためであった。昨年度まで多くの韓国司法修習生が来日し、日本での研修で大きな刺激を受けて帰国し、その後の日韓交流の中心となってきた経過があっただけに、極めて残念な結果となった。
 言うまでもなく、公害、環境問題は、全人類的課題である。特にアジアでは、急激な工業化、自動車交通の増加、日本の公害輸出、各国の経済成長優先政策等により、深刻な被害が発生して来ている。これに対し、各国では、環境保護、公害被害救済を目指す市民、法律家が立ち上がり、エネルギッシュな活動を展開している。
 日本は、戦中、戦後の歴史を通し、アジアの政治、経済、社会の健全な発展を阻害し、環境破壊、公害被害の発生を助長してきた。公害弁連は、単なる地球村の一員としての責任にとどまらず、これらの歴史を踏まえた責任を、アジア諸国に対して負っている。
 これまで育んできた国際連帯の絆を、いかに深め、広げるか、公害弁連の更なる取り組みが求められる。