第三 公害裁判の前進と課題

七 公害弁連ホームページ


 公害弁連のホームページ開設以来約2年半を経過した。
 公害弁連は全国各地で展開されている公害裁判の弁護団の情報交換、経験交流を通じて、個々の裁判闘争に資することを重要な役割としてきた。そのために公害弁連ニュース・「情報と通信」の発行、総会・幹事会・事務局会議の開催等を行っているが、近年めざましい勢いで普及したインターネットを利用すれば、より早く効率的な情報の共有が可能になるばかりか、市民活動との新たな接点としても期待されるところである。むしろ大きな媒体を持たない組織や運動体にとって、インターネットは安価に利用できる極めて有用な新しいコミュニケーション手段であり、他方、これらの情報にアクセスしようとする市民の側からも、まずインターネット上に存在する情報の収集に取りかかることが一般化しつつある。
 開設後に設置したカウンターは12,000件を越え、閲覧者数は1日に数十件にのぼっている(いずれものべ数)。格別の宣伝もしていないにもかかわらず、情報の海とも言える奥行きの見えないインターネットの世界から、おそらく「公害」というたった一つのキーワードで検索し、たまたまこのサイトに辿り着いた閲覧者が毎日のべ数十名を数えるというのは、決して少ないことはない。むしろ、被害者であれ研究者であれ弁護士であれ、いずれも公害問題に関心を持った(あるいは持たざるを得ない)人々が多数存在していることを端的に示し、インターネット上への活動拡大の可能性を示していると見るべきであろう。他方で、予測されたところではあるが、各公害訴訟の相手方である企業や政府機関等からのアクセスもあるようで、公害弁連としての活動や意見表明に対して、企業や政府も関心を持たざるを得ないところとなっていることが伺われる。
 現在のところ、公害弁連ニュースWeb版を中心に、公害事件に関するトピック、各弁護団や運動体のサイトへのリンク集等を公開しているが、今後は電子文書保管庫を設置して訴状、判決、各種資料等をダウンロードできるようにしたり、電子会議室を設置することも検討しているが、本年4月施行となる個人情報保護法との関係もあり、実現には今しばらくの検討が必要であろう。行く行くは各弁護団や運動体のサイトへの「ハブ」としての機能と公害事件に関する情報の集約・管理を中心的な目的としたいと考えている。
 また、近年交流のある韓国等の公害・環境団体との関係を深める意味でも、是非英語版やハングル版、中文版などを設置できればより望ましいところであるが、管理担当者の能力不足もあり、この点は前途遼遠といったところである。お許しいただきたい。
 ホームページの管理・運営は現在事務局で行っているが、まだ内容・質とも不十分であることは否めない。事務局以外からも積極的な意見、感想をつのり、順次充実させていきたい。