海底で起こっていることを立証することは困難を極める。県は関電に遠慮してか被害調査すらしてくれない。裁判手続でこの点の立証をすることは大変である。また、上記の通り因果関係以外に多くの争点がある。そこで原告らは公調委で因果関係を明らかにしてもらうために裁判所に対して公調委に原因裁定を嘱託するように申立てた。関電は、被害の発生すら証明されていないとして嘱託に反対したが、双方意見をたたかわせた後、04年8月4日裁判所は公調委に対して原因裁定を嘱託した。公調委初の裁判所からの嘱託とのことである。嘱託事件のため審問手続では、当事者を原告、被告と呼んで手続を進めている。
公調委では、同年10月28日、12月26日と2回の審問が行われ、当事者双方に釈明、専門委員の人選について意見聴取が行われ、次回、2月23日には専門委員が選任されて調査が開始される見込みである。なお、裁判の方は、9月22日第9回以降公調委での審問の状況を見るため審理は実質停止中の状態である。
(4) 報告義務履行請求訴訟
被害訴訟と同時に、県漁連を相手に、受任者として、関電との交渉経過、合意内容、合意書等の状況、金員の総額、配分・費消・保管状況及び会議と記録の状況についての報告に加え、文書の交付(交渉過程で作成・提出文書・資料、議事録、配分基準、配分委員会の議事録等)を、報告義務の履行として求める訴訟を提起した。
被告県漁連は、既に口頭で報告してある、文書の交付義務はない、などと争った。富山地裁は、03年10月22日、関電との漁業補償に関する交渉の経過、受領した一切の金員の配分基準の報告を命じ、その余の部分と文書の交付については請求を棄却した。
私たちは、複雑な内容の被害補償交渉について、しかも、県漁連は関電から受け取った金額の相当額を自ら取得していることから利害相反もあるため、請求した内容の全ての報告とこれに関する文書の交付が不可欠だとして11月4日名古屋高裁金沢支部に控訴した。
控訴審では04年2月4日に第1回があり、同年12月13日第7回で結審し、本年2月28日判決予定である。控訴審では、裁判所は県漁連に対して、報告・交付できるものはできるだけすべきだと指示し、相当程度の報告をさせた一方、PTA役員に対して緩い説明義務しか認めなかった過去の判例を引き合いに出したり、「排砂実施について今後一切の異議請求をしない」との領収書兼確認書の記載を指摘するなどして、必ずしも当方の請求に理解がある姿勢には見えなかった。判決内容が注目される。
3 支援ネットワークの活動と今後の方針
03年の5月31日富山県内の環境保護グループ「黒部川ウォッチング」が中心となって被害訴訟を支援する県民のネットワークが立ち上がった。ビラ・チラシの作成、
ホームページ(http://homepage2.nifty.com/haisa/index.html)の立ち上げ、機関誌「きときと通信」の発行、適宜専門家を招いての講演会の開催など盛んに取り組みをしている。
もちろん当事者の漁業者も「キトキト」の魚が捕れる富山湾と漁業を子孫に残すことを目標として、地元にチラシを配布したり、アースデーに参加したり、国会要請を行ったりと積極的に運動に取り組んでいる。ぜひ今後のご支援をお願い致したい。