2002年7月22日、名古屋環状2号線東南部の沿線住民ら3902名が、事業施行者である国土交通大臣と日本道路公団総裁を相手に、名古屋環状2号線東部・東南部の道路及び関連施設の工事を行ってはならないことを求めて、公害調停を申し立てることとなった。
5 調停の経過
2003年3月には、現地視察が行われた。住民側は、特に環境の悪化の予測される扇川という川を挟んだ地域を委員に視察してもらい、地域住民が多数で直にその道路の悪影響の予測について説明をした。
その後、調停で、住民側は、相手方に、供用開始時期に環境保全目標が達成されず、住民に健康被害が発生するおそれがあること、したがって供用開始時期に環境保全目標が達成されるという根拠を明らかにすること、また供用開始時期を明らかにすることを求めた。国、道路公団は、これを明らかにできないといい、議論は平行線となった。
同年10月の調停期日では、調停委員会から、双方に調停案が出せないかという打診があり、住民側は、(1)工事の一部計画変更(とくに地上2階建て構造予定部分の、地下化など)、(2)供用開始時点での環境保全目標の遵守を約束すること、(3)供用開始時点で遵守できなかった場合の供用停止の約束などを骨子とした骨子案を提出した。
国、道路公団側は、2020年の時点での環境保全目標を遵守するという骨子案を提出した。
2004年1月の調停では、調停委員会は、出された調停案骨子について、住民側の調停案は、都市計画変更が必要であることから調停でまとめることが困難であること、国、道路公団の調停案は供用開始時の環境保全目標を遵守することが含まれておらず、従前、国、道路公団が述べていたことよりも後退した案であり、住民側が納得しないであろうことを指摘した。
その後、調停がかさねられた結果、2004年9月に調停委員会から、調停案が提出された。その調停案は、環境予測におおきな変動がない限り、供用開始時において、環境基準を遵守することを骨格とした案であり、調停案としては住民側としても評価できるものであった。
現在、この調停案を巡って、双方が詰めのやりとりが続けてられている。
6 今後の課題
道路財源の大幅削減のため、新規着工が遅れ、当初の予想より工事は遅れる見通しである。しかし、当地の国道23号線も大気汚染状況は改善されていないし、ひとたび道路が建設されれば、環境の破壊は止められない。もともと、環2沿線住民は、道路建設絶対反対という立場をとるものではなく、環境にやさしい道路をつくってほしいとの一致点で運動してきた。今も多くの住民が現在の計画のままでの環状2号線の建設を望んでいない。
現在の計画通りに工事が進んで、本当に環境基準を遵守することができるのかという住民の不安がある。一方で、事業者側は、建設促進の世論を組織的に策動し、早期建設を住民の意見だというキャンペーンを張りながら、工事を推し進めようとしている。公共事業のあり方を問う各地の闘いとともに、事業者側を追いつめる運動を強める必要がある。