あおぞら財団設立8年目の活動から
あおぞら財団 達脇明子


はじめに
 あおぞら財団(財団法人公害地域再生センター)が設立されて、まもなく9年目を迎えようとしています。あおぞら財団の理事の一人である村松昭夫弁護士が、2004年9月から事務局へ週2日常駐されることになり、新たな体制づくりの第一歩となりました。これによって財団運営の活性化が促進されてきました。
 また、新たな職員の加入により、地元との連携も大きく進み出しました。
 そこで、これらの状況を踏まえた2004年度の主要な活動について報告します。

地域との連携
 2003年度から、地元の企業(運輸業者)との連携によるエコドライブ(環境にやさしい運転)調査がスタートしました。
 地元の企業、行政、専門家が一同に会した会議の場で、運輸事業者の方が言われました。「これまで患者と地元企業はあまり顔を向かい合わせてこなかった。しかし、我々も排気ガスの中で仕事をしている。これからは公害の克服という中で、環境への取り組みを共に進めて行きたい。また、これからの企業はそうでないと生き残れない」
 エコドライブは、環境、経済面、安全面への効果(昨年度調査で燃費約10%向上)がありますが、社会的認知は未だ低く、指導機器の価格の問題、導入・通行面でのノウハウが少ない等の課題があります。
財団では、地域の企業との連携による取り組みを積み重ねることで、自動車交通に対する意識を少しずつ変えていき、社会全体へのエコドライブの普及を目指しています。
 また、2004年10月には、現在のビルを患者会とともに買取り、改修工事を行ない、新たなスタートを切りました。新たな第一歩として、地元・千舟地区の連合振興町会などの住民の方々をお招きし、ビルのお披露目会を行ないました。当日は、財団の活動紹介とともに、西淀川や地元地区の歴史や現状などを振り返り、地域の諸々について話をする機会となりました。財団では、今後も、区内の各地区を積極的にまわり、地域の人々と話をする中で、住民の方々とともに地域づくりに取り組んで行く予定です。

「ぜん息治療の最前線」の開催
 2004年度の大きな取り組みとしては、独立行政法人環境再生保全機構の委託事業であるぜん息等予防講演会「ぜん息治療の最前線」の事務局を引き受け、320人の参加者を集めました。基調講演「ぜん息治療の正しいあり方」を、成人編は、近畿大学医学部堺病院副院長・長坂行雄先生、小児編は大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター小児科部長・土居悟先生が行われました。また、つづく、パネルディスカッションでは、医療法人此花博愛会伝法高見診療所所長・川崎美榮子先生が加わって、症状や治療に対する貴重な発言が続きました。
 11月20日土曜日の午後2時から4時30分という時間帯でしたが、参加者からの質問に対しても先生方の回答が丁寧で他の参加者にもとても参考になる内容でした。このことは、当日配布したアンケートの回収率が大変良く、かつ熱心な書き込みや感想が多かったことでもよくわかります。「参考になった」とする回答率は約90%近くありました。
 パネルディスカッションについては、「時間が短い」、「あと30〜40分時間があればよかった」などの意見が多かったようです。
 また、今後の開催希望についても65件の回答が寄せられ、「年に1〜2回を希望」、「参加人数が50人程度なら発言できる」、「どんな規模でも、こんな講演会を何度でも開いていただければ結構だと感じます」、「特殊な病気ではないんだと実感することができたので、100人以上の規模の講演会の開催を希望します」などの感想や意見が寄せられました。
 開催日時近くになって、新聞で開催予定記事が掲載されましたが、電話での問い合わせが多く寄せられ、いかにこの病気で悩んでいる人々が多くて、相談する対象や新しい情報を欲しているかということが実感されました。

資料館づくりに向けて
 2004年度は、公害・環境問題資料を保存し活用を促進する事業に欠かせない資料館づくり活動でも、大きな進展をみました。資料室、資料室別室の整理が大きく進み、利用可能な状況を作り出すところまできました。同時に地域資料と称する様々な資料を扱っている専門家たちとの交流も進み、定期的なシンポジウム開催が軌道に乗り始め、公害・環境問題に関する資料を扱う団体としての評価も定まりつつあります。
 あおぞら財団内部での資料データベースは充実したものになってきています。それにともない、西淀川区内で史資料の保存や地域の歴史を探求しておられる個人やグループとも連携を深め、地域巡回資料館の実現をめざして活動していくことも内部で確認されました。

公害被害の体験を伝える環境学習
 あおぞら財団の重要な使命の一つは、公害被害をどう伝えていくかということです。設立以来、様々なツールを製作し、伝達方法を試みてきたわけですが、2004年度は、西淀川区内のウォーキングコースの設置に合わせて、公害の跡地を確認し、現地見学、フィールドワークに役立つための情報をいれたマップを作成しました。児童・生徒・学生、社会人を問わず、それぞれの場面で活用していただきたいものです。
 また、従来から続けてきた患者さんの語り部活動は、一定の回数を重ね、定着した感があります。
 2004年12月17日に、地元の府立西淀川高校3年生6クラスでの、弁護士と患者さんによる語り部活動から、生徒の感想をあげておきます。
「西淀に住んでるけど、ほんまに空気が悪いとおもう。友達からも汚ないっていわれたり、くさいっていわれたりする。田舎は愛媛やけど、やっぱ全然空気ちゃう!!!話きいて、ほんまに大変やってんなアアって。子どももおろさなあかんなんて…すっごい辛い思いしてんなーっておもった。空気を変えなあかん!!っておもった。公害について、ちゃんと考えさせられた。話してくれて良かったと思う。ありがとうございます。☆頑張ってください」

これからの財団活動
 しっかりと地元に根ざした地域づくり、これまでの様々な財団活動による実績、活動を通じて協力をしてくださった人たち。これらの財産を活かした情報ツールを製作し、より大きな発信活動を展開して、持続可能な社会づくりの一翼を担える存在をめざしたいと思います。