2 行政の対応に変化
住民との合意形成を無視した一方的な公共事業の在り方に対して国民の行政への批判は強い。国交省はこれまでの国民の批判が大きい公共事業の進め方を改め、今後の公共事業の在り方を国民との合意形成を重視する政策として各種審議会や研究会の提言という形で公表し、これを推進する姿勢を打ち出している。
計画段階のものにはPI(パブリック・インボルブメント 関係住民との合意形成の下で事業を進める)手法を適用することは当然であるが、すでに都市計画決定が終了している事業中の案件についても関係住民に対して説明責任を果たすことや合意形成をはかることは重要である。全国各地で道路建設反対の裁判や建設反対の住民運動などが起きるなど紛争状態にある事業は、一旦事業を中止して見直しを含め再検討する必要がある。
国民との合意形成を重視する政策を提示しておきながら、住民との対応窓口となる地方整備局や各国道工事事務所などの対応は、政策との大きな齟齬が見られる。最近、行政の政策には一定の変化が見られるが、政策と矛盾している現場の対応は直ちに正すことを強く求めていく。
3 今後の課題
税金のムダづかい、大規模な自然破壊、環境破壊、住民の生活破壊をもたらし暴走し続ける大型公共事業に対して住民勝訴の司法判断が出始めた。水俣病公害訴訟を始めとした公害訴訟と勝利判決・和解、大気汚染公害訴訟や薬害訴訟の相次ぐ勝利判決を土台に川辺川、有明海、圏央道あきる野勝訴と住民勝訴の大きな流れが出てきた。全国公害被害者総行動に結集した団体を始め、連帯の運動をさらに広げることが必要である。
国民との合意形成を重視するとした公共事業の在り方など行政手続きの民主的転換を進める運動を掛け声だけに終わらせるのではなく、実効あるものにすることはますます重要である。そのために各地域で旺盛な運動を展開すると同時に全国的規模での運動を行う。
裁判は運動を前進させるための有効な戦術ではあるが、裁判だけに運動を矮小化させてはならない。裁判は多大な労力と費用と時間を必要とすることも事実である。
運動を成功させるカギは、沿線住民だけの運動から周辺の多くの住民の理解と支持を得ることのできる運動に発展させることである。いかに多くの人に事実を知らせ、運動への共感を得るかは今後の重要な課題である。
いま、若い人達が運動の輪に加わることのできる運動の在り方が強く求められている。若い世代へのアプローチは特段の努力を傾注する必要がある。