日本環境法律家連盟の課題
弁護士 籠橋隆明


1. 日本環境法律家連盟(JELF)では環境正義(environmetal justice)を理念に活動している。これは環境悪化によって個人の尊厳が侵害されることによって生じる問題が環境問題であるという認識を前提に、環境問題解決の基準は個人の尊厳の実現、すなわち、人権、平等、民主主義でなければならないという考えである。もとよりこのような考え方は足尾銅山事件以来考えられてきたことではあるが、近時は環境正義が国際社会の中でも使用されるようになり、新たな国際秩序の基本的考え方になりつつある。

2. JELFは弁護士によって構成される環境保護団体という点で我が国でも特異な地位を持っている。会員数は現在500名近くになり、発足以来一貫して増え続けている。年10回機関誌「環境と正義」を発行しているほか、会員の求めに応じて環境訴訟に関する情報を提供している。JELFのウェブサイトを徐々に充実させ、全国に起こっている最近の訴訟事例についてはほぼ掲載が整いつつある。
 我々はJELFが単に情報ネットワークとして機能するだけでなく、事件を解決する能力を持たせようと言う方針をかかげ、JELFの組織拡大とともにJELF独自に取り組む課題ができている。その典型的な例が沖縄ジュゴンの取り組みである。これは辺野古海域建設されようとしている米軍基地建設に反対する取り組みであるが、日米環境派弁護士が共同して米国国防省を被告にサンフランシスコ連邦地裁で訴訟を係属させている。この訴訟を通じて、米国や国際社会の中でジュゴン保護の認知を得ようと言う戦略である。ちなみに、本件の事件名は"Okinawan dugong vs. Ramzfeld"である。最近では泡瀬干潟訴訟弁護団を組織して干潟埋立事業に反対する訴訟を提訴する予定である。
 JELF組織拡大とともに事務局機能も拡大した。昨年度は大阪事務所にJELFの事務所を開き、半専従を配置してロースクール、国際問題、関西区域の環境問題扱いを担当して活動を開始した。

3. JELFが最も力を入れているのは法曹養成である。修習生に対しては合格した時点での説明会から始まり、前期修習企画、実務修習中企画、後期サマーセミナーとほぼパターンは確立し、その内容が徐々に充実しつつある。修習生対策によって環境問題に関心ある若手弁護士が育っているし、あわせてJELFの拡大にもつながっている。JELFが発足以来一貫して会員が増加しているのはこうした修習生対策のたまものである。
 こうした対策にあわせて法科大学院対策がJELFの急務となっている。環境法が司法試験科目になったこともあって各大学で環境法講座が設けられつつある。こうした講座の講師あるいは教授にJELFの会員がなっていることも少なくない。この点についてのJELFの活動方針は次の通りである。
(1) 学生中の環境問題に関心ある活動家グループを養成して学生の自主的企画を進めていく。
(2) JELFより法科大学院に企画を持ち込んで学生の関心を集めていく。
(3) 法科大学院の教員ネットワークを作り上げ、教員を通じて環境問題への関心、JELFへの関心を高めていく。
 これらの活動方針のもと、学生の受け皿としてJELF学生会員制度を設けているほか、JELF未加入学生のためにJELFの無料メールマガジンを月に2回作成して配布している。
 法科大学院の学生は厳しい状況に置かれているが、志をもって大学院の門をくぐった学生は少なくない。こうした学生は「動機」に飢えており、少しでも生の現実、生の社会問題に接することを望んでいる。私たちJELFはこうした学生の要求にできるだけ積極的に応えていく方針である。