本件廃プラ処理施設においては、一般家庭から排出されるプラスチック製容器・包装物をただ単に「処理」するのではなく、これを原料として「再生利用」して、パレット製品を製造するとしている。こうしたプラスチック製容器包装廃棄物を100%再利用するパレット製造施設は珍しく、1日あたり48トンもの廃プラを使用するとしている。
本件廃プラ処理施設においては、廃プラの解体(解砕)→手選別→破砕→洗浄→比重選別→乾燥→減容(熔融)→射出成型の各工程が行われることになっており、こうした工程から有害化学物質の大量排出による公害発生が心配されている。
3 廃プラ処理施設からの有害化学物質が発生するおそれ
平成15年6月24日、公調委は、中間処理施設に搬送する不燃ゴミ(この中には多量の廃プラが含まれている。)の圧縮作業を行っていた不燃ゴミ積み替え施設(杉並中継所)の近隣住民に、いわゆる化学物質過敏症に似た症状が出現した事件(いわゆる杉並病公害)について、近隣住民の症状と杉並中継所からの排ガスとの間に因果関係が認められるとする原因裁定を行った。
本件廃プラ処理施設は、この杉並中継所よりもさらに多種多量の有害化学物質が発生するおそれが強い点が指摘されている。本件廃プラ処理施設には、「解砕」、「破砕」工程(杉並中継所における「圧縮」工程に相当するもの)のほかに「熔融」工程、残査廃プラの「圧縮梱包」工程が存在するため、廃プラに強度の物理的圧力(機械的せん断力)を加えることにより有害化学物質が発生するほか(いわゆるメカノケミカル反応)、熔融工程において廃プラの熱分解に伴い有害化学物質が発生することも指摘されており、より一層多種多様な有害化学物質が生じる危険性がある。
にもかかわらず、業者は粉じんのみの調査を行っただけで、本件各工程に伴って発生する有害化学物質については何ら調査、予測及び影響の分析は行っていない。唯一、類似施設と称する施設での調査を行ったとして、その調査結果を提出してきているが、規模の違いなどとても安全性を証明するような調査ではなく、むしろ、この調査によっても有害化学物質が発生していることが明らかになっている。
また、業者は、当初は、安全性の根拠として、使用する廃プラが容リ協の審査を通った品質の保証されたものであると主張していたが、その後の求釈明で、4月からの操業にあたっては、容リ協からの廃プラは使用できないことを認め、その点でも安全性の重要な根拠が失われている。さらに、本件廃プラ処理施設は、建築基準法第51条但書が適用されるべき場面ではないにもかかわらず同条但書を適用し、住民の意思を無視して建築許可手続が進められたという点も、重大な問題点として指摘されている。
4 最後に
以上のように、廃プラを含んだ不燃ゴミの圧縮工程から杉並病が発生したという前例があること、本件廃プラ処理施設における排ガス発生の高度の蓋然性があること、発生する有害化学物質についての影響調査が行われていないこと、しかも有効な排ガス対策が取られていないことなどから、本件廃プラ処理施設が稼働を始めれば、周辺住民に健康被害が生じるおそれが極めて高い。
廃プラは年々使用が増加しており、根本的には減量化の方向性が強く求められている。本件廃プラ処理施設は「リサイクル」施設とは名ばかりで、むしろ税金の無駄遣いではないかという大きな疑問があり、周辺住民の健康を侵害するおそれも極めて強いものである。裁判所による操業差し止めの決定が強く求められている。