【尼崎道路公害訴訟関係】

「大型車交通量低減のための意向調査」の実施について(声明)

尼崎道路公害訴訟患者会・原告団
尼崎道路公害訴訟弁護団

1 第11回「連絡会」での合意成立
 本日,第11回「連絡会」において,2003年6月に公調委で成立した「あっせん」合意による「大型車交通量低減のための総合的調査」の実施内容について合意が成立した。あっせん合意により「連絡会」が公開され,03年9月30日から昨年11月5日まで8回の「連絡会」が開催された。この間,あっせん合意の懸案であった本件地域におけるSPMなど汚染物質の削減,環境負荷を軽減する中心的施策である「大型車の交通量低減のための総合的調査」の内容,方法について集中的に意見交換が行われた。我々は,あっせん合意後最初の「連絡会」(2003年9月30日)において,あっせん合意を踏まえ,・「建設的かつ有効な意見交換」を行なうこと,・調査開始の準備段階から実施,試行,警察庁への要請までの全てのステージで文書・資料を公開すること,・調査結果を踏まえた警察庁への要請は文書で行ない,当然のことながら回答も文書で行なわれるべきことを申し入れ,国交省も同意した。その後の「連絡会」は順調に進むと思われたが,結局,合計8回もの「連絡会」を重ね,第10回「連絡会」(昨年11月5日)で漸く,前記「総合調査」について原則的合意に至り,本日,調査内容,実施時期を含め合意が成立した。
2 合意成立までの経緯と評価
 「連絡会」では,「総合的調査」実施について,・大型車低減の削減目標値を設定すること,・湾岸線などへの交通転換の前提である「43号線の交通規制区域の拡大問題」,・ロードプライシングの対象路線である「湾岸線の料金割引区間」について「西線」のみでなく「東線」を含めるかどうかなどが問題とされた。「あっせん」合意による調査については,本件地域における大型車の交通量の低減を図ることが目的とされ,「国道43号線において部分的な通行規制が実施された場合における運行経路の見直しの意向調査」と明記されているし,運行経路見直しを誘導する「環境ロードプライシングの充実」は,それまでの公団実施にかかる社会実験結果からすると1割とか2割の割引率の設定では意味がない。本日合意した「総合調査」(意向調査)では,これらの問題が克服され,本件総合調査の目的が尼崎地域の交通量低減を1日も早く実現することであることが確認され,ロードプライシングの対象路線に湾岸線「東線」も明示されるなど充実,我々患者会・弁護団の要求が基本的に受入れられた内容となっている。この成果は,「連絡会」が公開され,議論の内容や,問題点が市民参加の中で明らかにされてきたことによる。
3 今後の課題
 本日合意した「大型車の交通量低減に関する意向調査」は3月上旬から実施される予定であり,「あっせん」合意に基づく調査は,時間がかかりすぎた感はあるが,いよいよ動き出す。大型車などによる道路公害は首都圏東京を中心に激化し,環境基準は多くの地域で引き続き未達成で,特に汚染物質とされたDEP(ディーゼル排気微粒子)の健康影響調査は遅々として進んでいない。三井物産が大型車に装着するDPFに関する虚偽データ作成・詐欺事件で強制捜査を受けるなど単体への規制も進まない状況の中で,尼崎地域の大型車交通量低減に向けた「総合調査」の実施は,総量規制に向けて大きな一歩を踏み出すもので,差止め判決を獲得した尼崎道路公害訴訟の成果であり,極めて大きな意義がある。今後,国交省により充実した調査がなされ,調査データと分析結果の開示がなされることは当然であるが,患者会・弁護団としては調査結果に基づく警察庁への誠実かつ効果的な要請が行なわれ,効果的な環境改善方策が導き出されるよう引き続き全力を尽くす決意である。併せて国交省は勿論,環境省や尼崎市をはじめとする関係行政当局が,本件地域における道路公害・環境改善の責務を果たされるよう強く要望する次第である。

     2005年1月21日
以上