【普天間爆音訴訟関係】
抗議声明

 本日,那覇地方裁判所沖縄支部飯田恭示裁判長は,普天間米軍基地爆音差止等請求事件について普天間米軍基地司令官リチャード・W・ルーキングに対する原告らの損害賠償請求を棄却するという前代未聞の判決をした。これは,まさに法治国家の基本を踏みにじる暴挙といわざるを得ない。
 被告ルーキングは,日本の司法権を全く無視して訴状の受領を拒絶し,答弁書すら提出しなかった。それにもかかわらず裁判所が被告の反論を求めることもなく,審理もせずに原告らの請求を棄却することは,原告らの裁判を受ける権利(憲法32条)を奪う重大事である。
 原告らは爆音について「内臓がえぐられるような音」「体の内臓を切りきざむような感じ」「心臓が押しつぶされ,腸わたがえぐられるような感じ」と訴え,それによって生じる恐怖感を「天井が崩れ落ちてくる恐怖におそわれる」「巨大な怪物が襲いかかってくるような凄まじさ」「脳神経や骨髄に強烈にしみこみ生きた気持ちがしない」と訴え,さらに航空機等の落下に対し強い恐怖感を抱いている。その恐怖が現実となったのが8月13日の輸送用大型ヘリコプターの沖縄国際大学校舎激突炎上事件であり,原告らの不安と恐怖は増幅し深刻化している。
 被告ルーキングは,このような爆音被害を生じさせ,原告らの生命と健康,そして平穏な生活を破壊するという明白な人権侵害を継続している。航空機による騒音が一定レベルを超えると違法となることは公知の事実である。被告ルーキングは,本件爆音が違法であることは充分承知している。とくに普天間飛行場については,1996年3月28日付の「航空機騒音規制措置に関する合同委員会」で普天間基地司令官に対し,航空機騒音の最小限化等の責任が課せられているのであるから,本件爆音発生行為は明白に違法な公務と言わざるを得ない。被告ルーキングは,本件爆音加害行為を防止する職務上の防止義務を果たしていない。被告ルーキングの不作為は,まさに故意又は重過失との評価を受けるべき不法行為である。原告らは本件裁判において,「地位協定18条5項(f)は『その公務の執行から生ずる事項については,日本国においてその者に対して与えられた判決の執行手続きに服さない』と規定し,執行手続の免除に限定している。このことから,日本の裁判所は公務執行中の合衆国軍隊構成員である被告ルーキングに対する損害賠償命令を発することができる。地位協定がその個人責任を肯定していることは明らかである。この地位協定を実施するための民事特別法に合衆国軍隊構成員の個人責任を免除する明文規定はなく,同法は地位協定18条5項(f),18条9項が合衆国軍隊構成員には個人責任が存することを前提として,日本国が合衆国(軍隊)の賠償責任を肩代わりして被害者に対して賠償責任を負うことを規定したにすぎない。また,原告らは被告ルーキングには故意又は重過失があるから,国賠法の解釈としても,その民事上の賠償責任は免れない。」と主張し,法廷での公平な審理を求めていた。原告らの真摯な訴えに対する裁判所の判断は司法の名に値しないものであり厳重に抗議するとともに,原告らは直ちに福岡高等裁判所那覇支部に控訴申立の手続をなすことを表明するものである。

   2004年9月16日
普天間爆音訴訟原告弁護団
団長  新 垣  勉