【新横田基地公害訴訟関係】

声     明

1 東京高等裁判所は2004年12月27日,新横田基地公害訴訟のうちアメリカ合衆国に対する訴訟(対米訴訟)について,2002年4月12日の最高裁判決を踏襲し,原告らの控訴を棄却する判決を下した。
 原告らがこの裁判でアメリカ合衆国を被告としたのは,旧横田基地公害訴訟において,最高裁が,国に対し米軍機の飛行差し止めを求めるのは,「支配権の及ばない第三者の行為の差止めを求めるもので不適法」としたからである(1993年2月25日判決)。 このたびの判決は,改めて,アメリカ合衆国に対して,法的救済を求めることができないとしたもので,きわめて不当である。法の支配の原理のもと,放置されつづける違法状態に対し,被害者の法的救済手段を閉ざすことは,司法の自殺行為といわざるを得ない。
2 原告らは,新訴訟提起後3度に渡って訪米し,アメリカ合衆国政府及び議会関係者へ被害実態を伝え,米軍機による騒音被害根絶へ向けた要請行動を行ってきた。また,ニューヨークタイムズ紙には意見広告を掲載し,横田基地の騒音被害の実態をアメリカ国民に広く訴えてきた。アメリカ国民の中からも,我々の要求に対し大きな共感が寄せられている。
 原告らの訪米活動から明らかになったことは,我国政府がアメリカ合衆国政府に基地被害の実態をきちんと伝えておらず,被害根絶に向けたまともな取り組みを行っていないということである。新横田基地公害訴訟に続き,新嘉手納爆音訴訟がアメリカ合衆国を被告とし,普天間基地訴訟が米軍司令官を被告としたのも,我々と同じ思いからである。
 横田基地の騒音被害については,1981年7月の旧1・2次訴訟1審判決以来,7度にわたり米軍機の飛行は違法状態にあるとの司法判断が下されている。最初の違法判決から四半世紀にならんとするにもかかわらず,我国政府がこの問題の解決を放置し続けることは言語同断といわざるを得ない。原告らは,政府の不誠実な対応に対しあらためて抗議するとともに,政府に対し,被害救済に向けた抜本的対策を直ちに講じるよう強く求めるものである。
 国に対する訴訟(控訴審)は,昨年12月8日に結審となり,今春にも新訴訟の控訴審判決が言い渡される予定である。 アメリカ合衆国に対する訴訟を認めないのであれば,国に対する差止請求を棄却した1993年2月の最高裁判決を変更し,国に対する差し止めを認めるべきである。また,この間,住民が被った被害に対し,国の対応の悪質性を正面から見据え十分な被害弁償をすべきである。さらに,旧訴訟判決後も騒音被害が続いている実態を直視し,過去の損害賠償とともに,騒音被害がなくなるまでの将来の損害賠償請求も認めるべきである。
 原告らは,対米訴訟を否定した最高裁判決及び東京高裁判決にもかかわらず,違法な夜間早朝飛行の差し止め要求を断念することはない。原告らは,人として当然の権利である「静かな眠れる夜を返せ」との旗を高く掲げ,騒音被害根絶まで,引き続き闘い続けることを宣言する。

2005年1月21日
新横田基地公害訴訟団
新横田基地公害訴訟弁護団