2009年3月6日

水俣病不知火患者会 会長 大石利生
ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟原告団 団長 大石利生
ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟弁護団 団長 園田昭人
同                  近畿弁護団 団長 徳井義幸

 本日、与党水俣病問題プロジェクトチームは、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」を正式に決定した。
 しかし、同特措法案は、「被害者救済」とは名ばかりで、水俣病被害者を切り捨て、加害企業チッソを救済することで水俣病問題を混乱させるものでしかない。
 まず第1に、同特措法案は「被害者大量切り捨て策」である。
 与党PTの方針は、2007年7月発表の「中間とりまとめ」等を見る限り、申請者の3人に1人しか救済しないものと評せざるをえない。この点に関する患者団体の批判に対し、与党は「救済を受けるべき人は救済する」と述べるのみでなんら説明しておらず、「3人に2人を切り捨てる」大量切り捨て方針であることはもはや明らかである。そもそも、「最終解決」と銘打っておきながら、国は未だに地元が要求する地域住民の健康調査も行っておらず、正確な被害者の実態把握ができていない。そうでありながら、3年の期限を切ってその後に現れた水俣病患者を一切救済しない本法案は、現在声を上げている患者の切り捨てに加え、未だ声を上げられないでいる潜在患者を完全に切り捨てるものである。
 第2に、同特措法案は「加害者救済のための幕引き策」である。
被害者補償を目的とする莫大な公的支援を受けた加害企業チッソが、分社化によってその被害者補償責任を免責されることになる。また、共同加害者である国・熊本県の責任もあいまいなまま、地域指定解除による幕引きが図られようとしている。
 第3に、同特措法案は「法治国家にあるまじき司法無視の無法」である。
行政認定の認定基準を見直さないまま、国の認定審査会をも利用して被害者を切り捨てようとするとともに、与党新救済策を前提にした本法案の救済内容も最高裁判決を無視して開き直っている。しかも、「救済措置」の対象者となるには、認定申請や訴訟提起を行う権利を放棄することが条件とされ、憲法で保障された裁判を受ける権利を侵害している。
 このような「被害者大量切り捨て策」「加害者救済のための幕引き策」「法治国家にあるまじき司法無視の無法」は、被害者としても絶対に受け入れられるものではないし、公害の原点とも言われる水俣病についてこのような法案の成立を許すことは、公害の歴史に悪しき前例を作ることになり、全ての公害被害者のためにも決して許されるものではない。
我々は、この法案の成立を決して許さず断固反対するものである。
 我々は、司法救済制度の早期確立に向けて引き続き力を尽くすことを、改めて決意するとともに、全ての水俣病被害者を救済するために、今こそ被害者たちが連帯して声を挙げることを呼び掛けるものである。