(第32回総会・熊本/人吉)

 2003年(平成15年)1月24日、遂に、国営川辺川利水訴訟控訴審が結審し、2003年〈平成15年)5月16日午後2時に判決言渡期日が指定された。

 福岡高等裁判所における同訴訟の審理において,国営川辺川土地改良事業変更計画は,事業の必要性,費用対効果の観点からも、同意取得手続きの観点からも多くの問題点が存していることが明らかになった。

 かかる問題点は、例えば,同意取得手続きについて見ても,同意署名簿の偽造、変造の横行という極めて重大な瑕疵を含んでいることから、上記判決の結果を待つことなく、農水大臣は、直ちに同計画を中止すべきである。これは圧倒的多数の受益農家の意向にも沿うものである。

 このように,多目的ダムたる川辺川ダムの主要な目的の一つである「利水」はすでに根拠を失っている。

 また、もう一方の主要な目的である「治水」についても、研究者グループなどからダムの治水効果に疑問が呈せられている状況にある。川辺川ダムは、堤高107・5メートル,総貯水量1億3300万トン(東京ドーム107杯分)という巨大ダムである。これが建設された場合の環境に対する影響には甚大なものがある。

 すなわち、全国でも貴重な尺アユと呼ばれる大きなアユの産地,絶滅危惧種であるクマタカの生息地が失われるほか,九折瀬(ツヅラセ)洞窟に生息する固有種であるイツキメナシナミハグモやツヅラセメクラチビゴミムシなども絶滅することは必至である。

 さらに,近時の深刻な有明海、八代海(不知火海)における環境破壊を契機として,有明海のような閉鎖性海域はそこに流入する河川からの影響を極めて受けやすく、このため,河川から海につながる水域を一つの水系としてとらえるべきとの提言もされており,川辺川ダムの海環境への影響についても極めて深刻な事態が予想される。

 以上によれば.川や海の深刻な環境破壊と引き替えに,川辺川ダムを建設する理由など何もないことは明らかである。

 よって、当連絡会議は,農水大臣及び国土交通大臣に対し、次の施策を求める。

1 農水大臣は、直ちに,国営川辺川土地改良事業変更計画を中止すること。

2 国土交通大臣は,直ちに,川辺川ダム計画を中止すること。

以上のとおり決議する。

2003年(平成15年)3月21日
全国公害弁護団連絡会議