(第33回総会・熊本)

 東京都収用委員会は,2004年2月23日,圏央道八王子ジャンクション工事に反対して,土地や立木の売却に反対している地主や立木トラスト者らに対する土地収用事件の審理において,最大の土地所有者である峰尾章子さんや多数の立木所有者が意見陳述をしていないにもかかわらず,一方的に公開審理を打ち切ってしまった。
 まずこのよう非民主的な審理手続きに厳重に抗議する。
 この審埋は2003年3月24日に日本道路公団が土地収用裁決申請をして,第1回の公開審理が開かれたのは2003年8月21日であるからわずか半年で7回の公開事理で打ち切るという異常な早さであった。
 しかも審理内容は事業認定に対する不服の意見は一切受け付けず,事業認定に重大な瑕疵があり無効となる理由について権利者全体で1時間しか認めず,また土地の区域や損失の補償については5時間しか発言時間を認めない等と権利者らの意見陳述を著しく制限するものであった。
 同じ圏央道工事に関して行われたあきる野市の土地収用委員会の審理と比較しても異常な早さである。あきる野の場合は2001年5月から2002年5月まで約1年間で10回の公開審理が行われた。八王子市裏高尾の関係者はあきる野市の100名余よりはるかに多く2000名弱であったことからみれば公開審理の期間はもっと多くてしかるべきであった。ところが東京都収用委員会は土地収用法の改正を理由に公開審理での権利者らの意見陳述を著しく制限したのである。
 土地収用法は2001年7月に改悪され2002年7月から適用された。この土地収用法の改正(改悪)は,立木トラストなど多数人が公共事業に反対している土地の収用手続きを簡易に迅速にする目的で,収用委員会の審理を補償金額などに限定し,事業認定に対する不服など取消理由の意見陳述をさせないというものである。直接には圏央道に反対している八王子市高尾山の運動を標的にしたものと言われていた。
 そもそも,土地収用法改正の眼目は改正法付則6条が指摘するように「政府は事業を実施する際には利害関係を有する者などの理解を得ることが重要であり,そのための情報公開など事業の施行についての理解を得るための措置について総合的な見地から検討を加えること」が指摘されているように,事業により不利益を受ける住民の意見を反映させることにあった。
 しかし,その実態ほ,事業認定手続きで形式的に公聴会を義務付けて反対住民の発言の機会を保障しただけに過ぎず,むしろ収用委員会の審理を土地所有者らの意見陳述を制限することで収用を簡易迅速にし,事業認定に不服の住民らの意見を封殺する目的で運用されているのである。
 このような土地収用法の運用は法改正の目的に反するもので,むしろ利害関係住民の意見を反映させることが必要である。
 土地収用法の改正に関わった現最高裁判事の藤田宙靖氏は,都市計画段階から周辺住民の意見を反映できるシステムにしない限り,周辺住民が発言できる場はなく,結局は事業認定に瑕疵があり収用裁定に事業認定の違法性が承継される限り,土地収用手続きの最終場面である収用委員会でしか,事業認定の問題点について住民の意見が発言出来る場が無いことを指摘しているのである。
 従って,改正土地収用法の下でも収用委員会の審理において,事業に反対している土地権利者ら関係住民の事業認定に対する意見陳述の機会を保障すべきである。
 とりわけ,圏央道八王子ジャンクション工事に反対している裏高尾地区の土地所有者や立木所有者らは,事業認定段階では土地収用法の旧法が適用され,一方収用委員会の審理段階では改悪された新法が適用されたため,圏央道事業に対する意見を主張する場が全く保障されなかったことでこの矛盾はいっそう明らかとなった。
 東京都収用委員会は,圏央道八王子ジャンクションの収用手続きに関して,公開審理を再開して意見を述べていない土地権利者ら関係人の意見陳述を認めるべきである。
 また土地収用法の改正の目的は事業に対する住民の意見を反映させることであり,住民の意見を制限することではない。
 従って,事業の計画段階において利害関係住民の意見が反映されていない現行制度の下では,収用委員会の審理においては土地所有者ら関係人の事業に対する意見陳述の機会を最大限保障すべきである。

2004年3月21日
第33回全国公害弁護団連絡会議総会