(第35回総会・大阪)

 東京地方裁判所民事38部は2005年5月31日、圏央道八王子地域の事業認定及び収用裁決取消請求裁判において、原告らの請求を退ける判決を言渡した。この判決は、2004年4月22日に東京地方裁判所民事3部が圏央道あきる野地域の事業認定及び収用裁決取消請求訴訟において事業認定及び収用裁決が違法であるとして取消した判決の優れた判断と理論を否定し、時代の要請に逆行するものであった。圏央道が、世界遺産に匹敵する高尾山や八王子城跡の貴重な自然環境を破壊し、オオタカの営巣放棄や地下水脈を破壊するばかりか、裏高尾地域での騒音被害や大気汚染の被害を発生はさせることは科学的に明らかである。また、圏央道は、都心の渋滞解消や多摩地域の交通渋滞の解消と経済の発展に必要であるとの国土交通省の主張が虚偽であり、公共性が認められないことも明らかとなっている。
 裁判所が圏央道の事業認定及び収用裁決を認める不当な判決を下したのは、司法の行政に対するチェック機能を果たさず、国土交通省の主張する圏央道の公共性・公益性を無批判的に採用した結果であって、行政に追随したものである。
 圏央道事業は、未来の人々に遺すべき貴重な自然環境を取り返しのつかないほどに破壊するものであるばかりか、巨額な税金の無駄使いである。最近明らかとなった圏央道橋梁工事入札談合事件も、圏央道が国民の為ではなくゼネコンのための無駄な公共事業であることを明らかにした事件である。
 国土交通省は高尾山に圏央道トンネルを掘るため、昨年9月28日土地収用のための事業認定の申請を行った。圏央道に反対する住民や市民200余名は直ちに昨年11月1日国土交通大臣に対し事業認定差止請求訴訟を提起し事業認定をさせない戦いを始めた。高尾山は1300種を越える植物や80本のブナ林、800本のイヌブナがあり、豊かな植相から昆虫や動物も多く、世界遺産に相当する貴重な自然である。この自然を壊させてはならないと昨年4月には永六輔さん・小沢昭一さんら多数の文化人の賛同を得て受け3大新聞紙上に圏央道工事により高尾山が危機に瀕しているという意見広告が出て、高尾山の貴重な自然を護れという声が大きく広がっている。
 八王子城跡では昨年5月、12月、今年1月2月と文化遺産である御主殿の滝が4回涸れたが、この原因も圏央道八王子城跡トンネル工事が御主殿の滝上流部に掘削が進んできたことが原因で、トンネル工事が八王子城跡の地下水脈の涸渇に重大な悪影響を与えている可能性が高まった。今後圏央道が高尾山トンネルに着手すれば八王子城跡と同じ地質の高尾山の水脈を破壊し、行者の修行に使われている琵琶滝、蛇滝が涸れ、1300種を超える豊かな植相が存在する水環境を破壊する危険性が益々高まった。
 我々は国土交通大臣・国土交通省及び中日本高速道路㈱に対し以下の通り要求する。

  1.  無駄で公害を発生し豊かな自然環境を破壊する圏央道工事を直ちに中止ること。
  2.  八王子城跡トンネル工事を中止して、八王子城跡で起きている地下水の異常事態の原因究明を行い、文化財保護法により保護されている八王子城跡の御主殿の滝や坎井の保全を万全にすること。
  3.  国土交通大臣は高尾山トンネルに関する圏央道事業認定申請を拒否ないし棄却すること。

 以上,決議する。

2006(平成18)年3月18日
第35回全国公害弁護団連絡会議総会