(第38回総会・東京)

 公式発見から53年目を迎える水俣病問題は、熊本・鹿児島・新潟各県で2万6000名以上の未救済患者の存在が明らかになりながらも、最終全面解決に至っていない。
 2004年10月15日に言い渡された水俣病関西訴訟最高裁判決は、水俣病の発生拡大の責任が国及び熊本県にもあることを明確に認め、産業公害における行政の規制権限行使を厳格に義務づけた一方、公健法上の認定審査基準(いわゆる52年判断条件)を満たさない者であっても水俣病被害者であることを明言し、それまでの水俣病認定行政が被害者救済制度として不十分なものであったと厳しく断罪した。
 ところが、2009年3月13日、国会に提出された「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法」案は、究極の加害者救済策というべきであり絶対に許されない。すなわち、同法案(全40条)は、認定申請や訴訟を取り下げることを救済条件とし(同5条)、原因企業チッソを賠償責任から解放するためにチッソの分社化を認め(同8条以下)、税制優遇措置も与えていることに加え(同30ないし32条)、その後、水俣病認定制度自体を終了することを宣言しているのであり(同7条)、およそ水俣病問題の最終解決を図る(同1条)ものではないのである。
 このような「被害者大量切り捨て策」「加害者救済のための幕引き策」「法治国家にあるまじき司法無視の無法」は、被害者として絶対に受け入れられず、公害の原点とも言われる水俣病についてこのような法案の成立を許すことは、公害の歴史に悪しき前例を作ることになり、全ての公害被害者のためにも決して許されるものではない。
 これまで長年にわたり、水俣病問題の最終全面解決のために尽力してきた公害弁連は、この1年を、ノーモア・ミナマタ訴訟を中心とした裁判での闘争を中心として更なる連帯を広め、国民各位の御理解の上で国民的世論を喚起して司法救済制度を確立し、一人の水俣病患者の切り捨ても許さない解決を目指して前進する年とすることを誓う。

2009年3月29日
第38回全国公害弁護団連絡会議総会