2005年10月3日
公 害 弁 連 声 明
全国公害弁護団連絡会犠
本日、ノーモアミナマタ国家賠償請求訴訟が熊本地裁に提起された。
2004年10月15日に最高裁は水俣病における国の責任について初めて断罪する判決を出した。これは水俣病全国連によって勝ち取られた1996年の水俣病問題の解決が正しかったことを最高裁も改めて確認し、さらに解決の法的根拠を明らかにしたものである。
その後、熊本・鹿児島両県で公害健康被害補償法に基づく認定申請者が相次ぎ、3000人を超えるに至った。
これらの認定申請者のほとんどは新たに申請をしたもので、そのほとんどは1956年前後に生まれ、濃厚なメチル水銀汚染を受けたものである。これらの認定申請者を診察した水俣市内の医師たちは、司法が認めた基準に従っても救済をする必要性があることを認めている。
しかしながら、国は水俣病患者を幅広く救済する立場から行政認定制度を変えることをせず、今月13日に水俣病患者でないことを前提にした新保健手帳制度を強行しようとしている。
水俣病は、国が加害企業に加担した上で、後手後手の対策に終始する中で、被害者が苦しめられてきた歴史であった。しかしながら、水俣病患者を患者として救済することが、水俣病問題を解決する大前提である。
来年は水俣病公式確認50周年であり、国は改めて原点に立ち返り、水俣病問題の全面解決を図る施策をとるべきである。
公害弁連は、裁判に立ち上がった原告各位に深く敬意を表するとともに、国民各位に対し原告らの要求を一日も早く実現するために改めて支持と理解を求めるものである。
(参照)
声 明
2005(平成17)年10月3日
ノーモア・ミナマタ国賠訴訟原告団
団長 大 石 利 生
ノーモア・ミナマタ国賠訴訟弁韓団
団長 弁護士 園田昭人
私たちは,本日,熊本地方裁判所にノーモア・ミナマタ国賠訴訟を提起しました。
2004(平成16)年10月15日に言い渡された最高裁判所・水俣病関西訴訟判決は,水俣病の発生・拡大につき,国及び熊本県の国家賠償法に基づく損害賠償責任を経め,行政認定制度で棄却された者の中にも水俣病被害者がいることを明確に認めました。この最高裁判決後,多くの水俣病被害者が,行政認定制度が改められ広く救済されることを期待し,鑑定申請を行いました。その数は,熊本県,鹿児島県で3000名を超え,新潟でも新たに認定申請が出ています。
しかし,水俣病被害者の期待に反し,国は認定基準を見直そうとはしませんでした。こうした事情もあり,行政の認定審査会は機能停止の状態に陥っています。また,環境省が先般公表した新保健手帳の制度は,被害者を水俣病と経めないまま医療費の補助で幕引きにしようとするものであり,しかも,認定申請の取り下げや訴訟をしないことを手帳交付の条件とするもので,加害者としての責任に基づく補償とはかけ離れたものです。
もはや,水俣病被害者には,訴訟以外に正当な補償を受ける途はありません。そもそも行政認定制度は,水俣病の発生・拡大に責任のある国・熊本県が,被害者か否かを決める制度であり,その加害責任が確定した以上,もはや正当性や公平さは認められません。水俣病被害者は,信頼できる公平な機関である司法こそ,正当な補償を実現できる場であると確信し,提訴することを決意したものです。
水俣病の歴史は,被害を無いものにしようと画策する加害者側と,これに抗する被害者側の激しい闘いの歴史でした。行政は,被害者が辛苦のすえ闘い取った判決の後,場当たり的な施策を行い,幕引きを図ろうとしてきました。しかし,場当たり的な施策では根本的解決を図ることはできなかったのです。
来年ほ水俣病公式発見かち満50周年を迎えるというのに,被害者救済問題さえ解決していないことは誠に憂慮すべき事態です。私たちは,最高裁判決を機に,そして50年目という節目の年に,被害者救済問題を決着させるべきだと考えます。
私たちは,本訴訟において,「司法救済制度」を提案し,その確立を目指します。「司法救済制度」とは,司法による水俣病被害者救済手続です。裁判所が,水俣病被害者か否か及び慰謝料の額を,最高裁判所判決を基本に据えて,認定するものです。また,司法認定を受けた被害者らに,充実した医療費等の補償をすべきことも 当然です。こうした抜本的な解決の仕組みを早急に確立し,3年以内に全ての水俣病被害者の救済を目指す決意です。
水俣病の発生・拡大につき責任のある者による正当な補償が実現してこそ,水俣病のような悲惨な公害を根絶できる,すなわち「ノーモア・ミナマタ」が実現できるものと確信致します。
国民の皆様の更なるご理解とご支援を切にお願いするものです。