一 活動の概要

1 今年度は、事務局会議5回と幹事会4回を開催し、内容は後記のとおりである。6月には不法行為等に起因する面会要求、チラシ配布などを規制する東京都迷惑防止条例「改正」に際し、反対意見書を提出するなどして、阻止をかちとる一翼を担った。そのほか、第27回公害被害者総行動に取組み、7月には日本環境法律家連盟と共催で修習生を対象にした環境セミナーも行った。また第2回幹事会(7月19日)は四日市で開催し、翌20日に開かれた四日市公害判決30周年を語り合うつどいに参加した。
 さらにはじめての取組みとして、8月23~26日に日本環境法律家連盟・グリーンコリア環境訴訟センターとの共催で日韓公害環境シンポジウムを韓国・ソウルにおいて開催。大気・基地訴訟などをめぐって相互の問題関心のかみあった熱心な討議が行われ、今後の交流に向けても有意義なものとなった。
 なお3月21日には、東京経済大学助教授の除本理史、渡邊知行両先生を招いて、総会記念シンポジウム「大気汚染未認定被害者の新たな救済制度の確立を求めて」を開催。翌22日には、東京大気訴訟の現地調査と被害者交流が行われた。

2 幹事会と事務局会議は、主に各弁護団の当面する裁判や運動の現状や課題について報告を受けて検討することや、公害環境問題をめぐる情勢などを論議してきた。なお幹事会では、第1回幹事会(6月7日)、第3回幹事会(10月6日)、第4回幹事会(1月10日)と3度にわたって、当該弁護団の参加も得て、東京大気裁判について集中討議を行った。判決日行動の位置づけと具体的展開、判決をふまえた今後の運動展開と裁判所に対する対応などにつき実践的かつ有意義な内容となった。
 今年度は情勢からして、東京大気裁判のテーマに集中したが、今後は必要なテーマについて適宜集中討議を行うことが重要であり、この際、さらに代表委員、副幹事長をはじめとした経験豊富なメンバーの参加を確保して公害弁連としての経験と実績をふまえた充実した討議を追求する必要がある。一方、参加者の確保のためには公害環境問題での最新情報や関心のある課題を取り上げた学習会の開催、現地調査など、多様な企画を工夫する必要があり、若手の弁護団員の出席を積極的に呼びかけていくことも重要である。
 事務局会議は5回開催したが、本年は毎回6~10人と出席率も向上し、幹事会・総会の準備、当面の活動の執行、ニュースの発行などにあたってきた。
 本年度も、事務局次長の任務分担の明確化の点で、国際交流-日韓シンポの成功の点で松浦、公害弁連ホームページ開設の点で加納、総会シンポジウムの準備の点で大江(昨年シンポ)、森(本年シンポ)の各次長の奮闘は特筆される。今後も活動の枠を広げ、課題に迅速に対応する努力が必要である。

3 公害弁連に加盟している弁護団の中心は、大気汚染裁判と基地騒音裁判で、これに近年道路反対裁判・調停が加わる形となっている。
 大気裁判では、西淀川・川崎・尼崎・名古屋南部を引き継いで国をはじめとした道路管理者に勝訴し、未認定患者につき損害賠償をかちとった東京大気判決をふまえて、国・東京都に対して早期の被害者救済制度の確立を迫るたたかいが重要となっている。そして、尼崎の公調委あっせん申立に象徴されるように勝利和解でかちとった各地連絡会において大型車・交通総量削減などの根本的対策を迫る取組みにつき、各地の連携を強め、たたかいを強化することが求められている。
 一方、小泉改革・都市再生の流れの中で幹線高速道路建設を強行する動きがいよいよ強まっており、これに抗して、高尾山天狗訴訟をはじめ、あきる野市収用裁決取消訴訟、広島国道2号線高架道路建設差止訴訟、さらには名古屋環状2号線差止公害調停などが続々と提起されており、公害弁連としても各地の連携をとりつつ、道路行政の抜本的転換を求めるたたかいへの取組みも求められてきている。
 さらに基地騒音訴訟では、新横田判決にみられる大規模訴訟に対する反動化をくい止め、本年にも結審が見込まれる新嘉手納訴訟で着実な勝利を積み重ねると同時に、差止めの課題で何としても米国政府相手に最高裁判決を克服する判断をかちとることが大きな課題となっている。
 大気汚染裁判や基地騒音裁判は、いずれも大気全国連や基地弁連を組織して、意見交換や共同行動などを行い大きな成果を上げてきている。公害弁連も日常的に情報交換を行うことはもちろんであるが、重大な情勢や局面においては、これまでの貴重な経験の蓄積をふまえて、意見交換や共同行動を行い、こうした裁判の勝利に向けて力を集中することが引き続き必要であり、公害弁連にはそうした役割が求められている。

4 公害弁連の今後の発展のためには、引き続いて廃棄物問題や自然保護、道路公害反対・大規模公共事業反対運動などとの共同行動を一層拡大することが必要である。とりわけ本年は、5月に川辺川利水訴訟の判決が予定されており、川辺川ダムをはじめとする自然・環境破壊の大規模公共事業に反対する裁判・運動との交流・連帯を大いに広めていきたい。
 いずれにしても、公害弁連が公害被害者総行動、公害地球懇、環境法律家連盟など関係団体との交流や連携を広げ、互いに活動の経験、成果、知恵を共有し、一層公害・環境分野で大きな役割を果たしていくことを追求することが重要である。
 具体的には、引き続き「公害弁連ニュース」や総会議案書に他団体からの投稿や具体的な課題での意見交換の場を積極的に設けることはもちろんとして、本年新たに開設した公害弁連ホームページを重要な武器として、さらに幅広い連携・交流を追求していきたい。

二 活動報告

1 幹事会
 (1) 第1回幹事会
   日 時  2002年6月7日
   場 所  東京
   出 席  馬奈木・森・中杉・原・加納・大江・花田・近藤・板井・松浦・小沢・西村 計12名
   内 容
    ・ 東京大気集中討議
    ・ ヤコブ勝利報告
    ・ 新横田最高裁判決と今後のたたかい
    ・ 公害弁連総会・シンポの総括
    ・ 日韓シンポ・韓国修習生受入れ
    ・ ホームページ開設
    ・ 7・20四日市30周年
 (2) 第2回幹事会
   日 時  2002年7月19日
   場 所  四日市
   出 席  中杉・加納・近藤・関島・松浦・野呂・西村・田宮(環境法律家連盟)・韓国修習生6名 計14名
   内 容
    ・ 日韓シンポ
    ・ 新横田判決と今後のたたかい
    ・ 東京都迷惑防止条例
    ・ 各地のたたかい
 (3) 第3回幹事会
   日 時  2002年10月6日
   場 所  東京
   出 席  白井・森・中杉・大江・近藤・関島・板井・松浦・黒岩・小海・小沢・小林・西村 計13名
   内 容
    ・ 東京大気判決直前集中討議
    ・ 日韓シンポ総括
    ・ 名古屋環2・広島国道2号報告
    ・ 総会日程・開催場所
    ・ 各地報告
 (4) 第4回幹事会
   日 時  2003年1月10日
   場 所  東京
   出 席  村松・白井・中杉・加納・岩井・近藤・榎本・白川・板井・中島・尾崎・久保・青木・西村 計14名
   内 容
    ・ 東京大気判決と今後のたたかい(集中討議)
    ・ 総会シンポジウム
    ・ 日本環境会議滋賀大会
    ・ 各地報告

三 役員・事務局会議

1 今年度の開催と参加状況は、次のとおり。
  4月30日(6名)、7月5日(6名)、9月5日(10名)、11月27日(8名)、2月5日(7名)

  毎回コンスタントな参加を得て、事務局次長の任務分担の明確化をはかることができた。

四 ニュース・通信の発行

1 ニュースは4回発行し、若手弁護士奮戦記をはじめ充実した内容となった。
2 「情報と通信」を出したが、後半息切れした。時宜を得た発行と一層の充実が必要である。

五 財政

 公害弁連の収入は、会費収入とカンパ収入が根幹であるが、今年度は、薬害ヤコブ全国連より100万円のカンパを頂いた。

六 新規加入

 名古屋環状2号線公害調停弁護団、普天間爆音訴訟弁護団、川辺川利水訴訟弁護団の3弁護団が新たに加入した。