本日、東京地方裁判所八王子支部において、新横田基地騒音公害訴訟について、国に対し騒音被害による損害賠償を命ずるとともに、アメリカ合衆国に対する訴えを不適法とする判決が言い渡された。
 本判決は、すでに最高裁判所でその違法性の判断が確定している横田基地における米軍機の騒音について、重ねて違法性を認定し、被害住民らの救済を認めたものであり、特に原告数約6000人というかつてないほどの大規模訴訟において国に対して約24億円という巨額の賠償を命じたことは、在日米軍基地のあり方について見直しを迫る判決として評価すべきものである。
 しかしながら、本判決は、陳述書が提出されていない被害住民については被害そのものの立証がないとして賠償請求を棄却した。これは、現に被害地域に居住することで騒音被害を被っていることは明らかであるにもかかわらず、その請求をき棄却したのであって、明らかに証拠を見誤った判断である。
 また、本判決は、基地周辺住民の切実な願いである夜間早朝の飛行活動の差止を認めなかった一方で、4月12日の最高裁対米訴訟判決を無批判に踏襲し、アメリカ合衆国政府に対しては裁判所への出頭すら命ずることができないとしたものであり、結局は今日現在も続く違法騒音を放置するしかないという不当な結論を導くものであって、法治国家の名に悖る判断と言うほかはない。
 また、本判決は、違法騒音の差止を認めなかったばかりか、将来にわたる賠償さえも認めなかったものであり、旧訴訟以来28年もの長期間にわたって違法騒音の存在を認定し続けながら、将来にわたる救済を頑なに拒む裁判所の態度には、憤りすら感じざるを得ない。
 さらに、本判決は、減額法理としての危険への接近を認めたほか、ごく一部とはいえ被告国の免責を認め、損害賠償を否定した。しかし、最高裁が違法と断じた基地騒音について危険への接近法理を適用することは、むしろ危険の居座りを公認したも同然であり、厳しく批判されなければならない。
 このように、本判決については一定の評価をすることはできるが、到底認められない判断の誤りが含まれていると言わざるを得ない。訴訟団・弁護団は早急に控訴の手続を進める意向である。
 静かな眠れる夜を取り戻すために、我々はさらに結束を強め、訴訟の場にとどまらない多角的な運動によって、違法騒音差止めの実現を目指す所存である。

2002年5月30日
新横田基地公害訴訟団
新横田基地公害訴訟弁護団