(1)  新たな被害者救済の前進
1)  1988年の公害健康被害補償法の指定地域解除以来、深刻な状況におかれてきた未救済患者の救済が、この間大きく前進し、これをふまえたさらなるたたかいもまた新たな展開をみせている。
2)  川崎では、1990年からの要綱救済に加えて、2007年から新たに全市を対象とした「成人ぜん息患者医療費助成条例」がスタートし、要綱患者と条例患者あわせて計3,000人をこえる新規患者の救済が実施されている。
 一方、東京では、東京大気裁判和解を契機とした医療費助成制度が、2008年8月からスタートし、現時点で新たに3万人を超える救済が実施されている。
 この間、とりわけ東京では、「ぜん息110番活動」をはじめとする周知活動が旺盛に取組まれ、これと東京民医連の全面的バックアップによる申請、患者会拡大運動が相まって、東京患者会の会員数は、2007年末の582名から2008年末に1,000名を突破する大きな前進をかちとることができた。

3)  こうした中で、川崎では、患者1割負担の撤廃をはじめとした5万人署名運動が精力的に取組まれるなど、制度改善をめざした活動が活発に取組まれており、東京でも、和解でかちとった東京都との連絡会・準備会を活用して、制度の周知徹底とあわせて、慢気・肺気腫への病名拡大・続発症の救済など制度改善を求める取組みが展開されている。
4)  これらの前進を大きな教訓として、他の地域でも新たな救済を求める取組みが広がりつつあるのが、この間の特徴である。
 大阪では、未救済患者の救済に向けて、公害患者会、大阪民医連、労働組合等による「あおぞらプロジェクト IN 大阪」がスタートし、国道43号線沿線をはじめとした健康アンケートが取組まれ、被害実態の解明と制度要求に向けた動きが開始されている。
一方、東京での前進に刺激を受け、埼玉、千葉でも救済制度実現をめざした準備会が結成され、新たな運動に立ちあがろうとしている。

5)  こうした動きを受けて、学者・専門家の分野でも、2007年11月に日本環境会議のもとに「大気汚染被害者救済制度検討会」が組織され、国レベルでの新たな救済制度創設に向けて精力的な検討が重ねられており、2008年9月の環境会議水島大会における中間報告、2009年3月のシンポジウム「新たな大気汚染被害者救済制度をめざして」の開催など着々と取組みが進められている。

(2)  PM2.5環境基準の設定をめざして
1)  米国では、すでに1997年に環境基準が設定され、これに対する規制も進められてきたPM2.5(微小粒子状物質)について、わが国ではこれまで国が敗訴した大阪西淀川、川崎、尼崎、名古屋南部訴訟の和解において、原告側は一貫してPM2.5環境基準の設定を求めてアタックしてきたが、国側はこれを拒否して遅々として進まず、ようやく東京大気訴訟和解で、「基準設定も含めて検討する」と重い腰をあげた。
2)  これを機に、早期の基準設定を求めて積極的な取組みが展開され、2008年3月には、WHOの第1人者を招いての国際シンポジウムが開催される一方、全国患者会と大気全国連では、意見書提出等と、10数回にわたる環境省交渉、環境省前宣伝と活発な取組みがなされた。
 こうした中で、2008年4月環境省の「検討会」がPM2.5の有害性を明確に認める報告を提出、その後2008年11月、中環審専門委員会が定量的評価手法について報告をまとめ、これをふまえて2008年12月、斉藤環境大臣がPM2.5環境基準設定に踏み出すことを表明し、中環審に対する諮問がなされるに至った。

3)  今後のポイントは、いかなる基準値が認定されるかにしぼられており、WHO、米国基準並みの厳しい基準値の設定を求めて、全国的な団体署名をはじめとした活動が進められている。

(3)  道路公害対策を求めるたたかい
1)  尼崎では、国道43号線からの大気汚染軽減のための大型車削減方策をめぐって前進がみられた。2008年7月、警察庁から国交省あてに「国道43号線尼崎地域において大型車を対象とした限定的な交通規制を実施することの可否に関する検討について」が提出された。これは2003年6月の公調委あっせん合意に基づくもので、大型車低減の必要性を十分に認識したうえで、交通規制は不可能ではなく、大気汚染軽減にとって効果的な方策でなければならないことを指摘。国交省が迂回路設定のために湾岸線に強力なロードプライシングを実施するならば、警察庁として必要な交通規制に協力するとの内容であった。
 その後の連絡会では、国交省との間で交通規制実施のため、湾岸線での環境ロープラの充実が必要であることの意見の一致をみており、今後はこの点での具体化を迫っていくことが早急な課題となっている。

2)  川崎では、この間大型車の臨海部誘導のためのアンケート調査が完了し、まとめ作業も完了した。今後はロードプライシングの具体化、ナンバープレート規制、走行車線規制をめぐっての警察・公安委との協議が喫緊の課題となっており、あわせて有力な迂回路としての一般道357号線整備もクローズアップされるところとなっている。
3)  また名古屋南部でも、同じく大型車削減のための調査が実施され、集計作業が行われているが、国道23号線を車線削減し、湾岸線の料金を5割引とした場合、大型車の半分が湾岸線に転換するとの結果が出ており、今後、アンケートをふまえた県警、県・市、NEXPO中日本、名古屋都市高速などによる検討会での検討を実効あるものにしている取組みが重要となっている。
4)  東京では、この間、和解条項に基づく第1回道路連絡会が開催されるなどしているが、沿道対策も含めて和解条項につき、はかばかしい前進はみられていない。具体的な箇所(まずは足立区)をとりあげての協議の方向も模索されており、大型車削減対策などの抜本策とあわせた追求を強めていく必要がある。

(4)  今後の課題
1)  川崎、東京での前進をふまえて、各自治体レベルでの新たな救済制度確立を追求するとともに、「救済検」での成果もふまえながら、国レベルでの制度創設に向けた全国的な取組みを強めることが求められており、その財源負担の観点から汚染原因者である自工会等に対する取組みも強化していく必要がある。
2)  WHO、米国基準並みのPM2.5環境基準の早期設定をかちとったうえで、これをふまえた道路、自動車公害対策の抜本的強化と、道路アセスの改善を追求する取組みが不可欠となっている。
3)  各地和解をふまえた道路連絡会での協議がはかばかしい進展をみせない中、昨年(2008年)は、大気全国連、全国患者会による国交省本省交渉が精力的に取組まれ、大型車削減方策の実行期限の明示を迫り、各地連絡会への国交省本省担当者の出席も要請し、一定の前進もみられている。この点での取組みも引続き強化しながら、連絡会の実質化を追求し、公害対策の早期実現を迫っていくことが強く求められている。