公害根絶と被害者救済を求める全国公害被害者総行動は、今年で満30年が経過しました。
 これまで、四大公害訴訟をはじめ数多くの公害事件について、被害者と弁護士、医師・学者、そして支援者が互いに連携して粘り強く運動や裁判に取り組み、被害の救済と公害の根絶のために大きな成果を獲得してきました。
 大気汚染公害訴訟では、千葉や倉敷では企業の責任が、西淀川や川崎では国や道路公団の責任が認められ、さらに尼崎や名古屋南部では道路公害の差止めという画期的判決を勝ち取り、それぞれ勝利和解に結び付けてきました。裁判の勝利にとどまらず、地域再生という新しい発展をめざしています。今は東京大気訴訟において、自動車メーカーの責任を問い、道路沿道以外に居住している原告らも救済しようとする闘いが取り組まれています。
 川崎市では、全市・全年齢を対象とする気管支ぜんそく患者医療費助成を勝ち取りました。東京都においても、緊急に医療費助成制度を確立させるよう全力をつくしています。
 しかし、国等は、我々の運動や裁判によって獲得してきた成果に従わず、「巻き返し」を図ろうと画策しています。
 新横田基地訴訟では、国は、東京高裁が被害救済に対する国の怠慢を指弾し、被害住民らの負担軽減のために認めた判決日までの損害賠償を、あえて争い上告しました。
 水俣病では、国は、公式確認から50年を経過しても、司法判断に従った認定基準の見直しに応じず、すべての被害者の救済をしようとしていません。
 公共事業をめぐるたたかいはかつてなく前進しましたが、行政の姿勢は、依然としてかわっていません。
 有明海訴訟では、国は、中長期開門調査を拒み続け、漁業被害との因果関係の解明を拒否しています。
 川辺川ダム訴訟でも、国は、事業計画取消判決が確定した後にも、未だにダム建設に固執し、自然を破壊する無駄な公共事業をあきらめようとしていません。
 圏央道でも、東京都は、あきる野の工事を完成させ、国史跡八王子城址のトンネル工事に続き、高尾山に対する事業認定の告示を行い、高尾山の貴重な自然を破壊しようとしています。
 このような国等の姿勢を改めさせ、被害者や住民らの「いのちと暮らしを守る」闘いを一層押し進めていかなければなりません。
 昨年社会的関心を集めたアスベスト被害は、戦前から明らかとなっていたにもかかわらず、国策により被害救済を放置してアスベストの使用が続けられてきました。先月大阪・泉南地域の住民が初めて国賠訴訟を提起しました。国民の間近で、膨大な量のアスベストが使用されているだけに、早急に解決しなければならない重大な課題です。
 我々の平和な暮らしと基本的人権にとって重大な影響を及ぼす憲法改悪、その先取りとしての国民投票法案や米軍再編の課題が今重要な局面を迎えています。戦争のできる国に作り変える憲法改悪と米軍再編の問題を見過ごすことはできません。同時に、憲法改悪と対をなす、愛国心の強制、国民の教育権の否定を骨子とする教育基本法の改悪の課題も急を告げています。
 私たちはこうした悪法に断固反対し、「なくせ公害、守ろう地球環境」の合い言葉のもとに、環境と平和を守るため、一層闘いの輪を広げていくことを決意し、参加者全員のアピールとします。

2006年6月6日
第31回全国公害被害者総行動デー・総決起集会