(第36回総会・東京)

 水俣病は,公式確認から50年が経過したが,未だに多くの水俣病被害者が正当な補償を受けられないまま放置されている。
 2004年10月15日,最高裁判所水俣病関西訴訟判決が言い渡された。この判決は,水俣病の発生・拡大についての国及び熊本県の国賠責任を認めるとともに,行政認定制度で棄却された者の中にも水俣病被害者が存在することを明確にした。この判決後,多くの被害者が行政認定基準が改められるものと期待して,認定申請を行った。その数は,4000名を超えている。
 しかし,環境省は,行政認定基準を見直そうとはしなかった。そのため,認定審査会は,委員の再任ができず機能停止状態に陥っていた。本年になり熊本,新潟において,認定審査会が再開されることになったが,行政認定基準は変更されておらず,新たな切り捨てが始まることは必至である。加害企業チッソは,昨年末になって,消滅時効,除斥期間経過を主張し責任放棄の姿勢を強めている。
 行政は,加害企業を一貫して擁護し,水俣病の発生・拡大を防止する対策を怠ってきた。それ放,最高裁関西訴訟判決は,国及び熊本県の加害責任を厳しく断罪したのである。行政認定制度は,水俣病の発生・拡大につき責任のある国の基準により被害者か否かを決める不合理な制度である。加害者あるいはこれを擁護する者が被害を正しく判定するはずはないのであり,国の加害責任が確定した現段階では,行政認定制度はもはや正当性も信頼性も認められなくなったといえる。
 2005年10月以降,1150名の水俣病被害者が熊本地方裁判所に司法救済を求め提訴した。国,熊本県及びチッソは,いたずらに争うべきではなく,最高裁判所判決(大阪高等裁判所判決),確定判決である福岡高等裁判所(水俣病第2次訴訟)判決を踏まえ,早期の補償に応ずべきである。
 また,行政は,汚染地区住民の悉皆健康調査を行い,被害の実態を明らかにし,全ての水俣病被害者を早期に救済すべきである。チッソは,数万人の重大な健康被害を引き起こした加害企業として責任を深く自覚し,全ての水俣病被害者に対し正当な補償を行うべきである。
 我々は,加害責任のある行政及び加害企業が,全ての水俣病被害者に対し,早期に,その被害を償うに値する正当な補償を行うことを強く求めるものである。

2007(平成19)年3月21日
第36回全国公害弁護団連絡会議総会