2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の過酷事故から2年以上が経過しましたが、東京電力や国は、未だに原発事故を収束できず、放射線に汚染された環境の復元や地域の再生の見通しも立っていません。故郷に戻れずにつらい避難生活を送られている方々や放射線の不安の中での生活を強いられている住民の方々などの多くの被害者らが十分な救済を受けられることなく放置されています。
 また、福島原発事故以降、裁判所の判断が揺れ動いています。最高裁は、半年で180人もの副作用死を出したイレッサ訴訟の被害者らの訴えを認めず、泉南アスベストの高裁判決、首都圏アスベストの横浜地裁判決、新カネミ訴訟の地裁判決などの不当な判決が続いています。政府は、水俣病の特措法による救済の打ち切りや普天間基地へのオスプレイの導入を強行し、さらには原発の再稼働や輸出、震災復興事業に託(かこつ)けた大型公共事業の復活など、公害や環境悪化をもたらす政策がすすめられようとしています。
 本年3月2日には、福島地裁といわき支部で、東京や千葉の避難者の方々とも呼応して、東京電力や国の不法行為責任を追及する訴訟が提起されました。九州の玄海原発、川内原発など、人類が制御できない原発の廃炉を求める闘いも広がり進んでいます。
 アスベストでも、泉南アスベストの第二陣地裁判決や首都圏アスベストの東京地裁判決では、国の責任を認める判決を勝ち取り、最高裁においてアスベスト被害について国の責任をきちんと認めさせる闘いが正念場を迎えています。
 また、4月の最高裁では、水俣病の認定義務付けを認める判決が出され、被害者全員の救済を目指すノーモア・ミナマタの新たな訴訟の準備も進められています。
 基地騒音訴訟では、全国の七つの訴訟で、3万6000名を超える原告が、夜間・早朝の飛行差止等を求めて闘いを続けています。
 大気汚染公害では、公害健康被害補償法や東京都の医療費助成制度を守り、新しい救済制度を作る闘いを、国内のPM2.5に対する有効な対策を実施させる運動とともに、一段と進めなければなりません。
 有明海を取り戻す闘いでは、いよいよ福岡高裁が定めた排水門開放の期限が迫ってきました。長崎県や農水省の抵抗を排して有効な開門を実施させましょう。高尾山天狗裁判は、昨年7月に終結しましたが、政府が全国で進めようとしている道路建設をはじめとする不要不急の大型公共事業を止めさせる闘いを一層盛り上げていきましょう。
 抗がん剤の副作用について救済制度を拡充する運動や除斥期間の壁に対するカネミの闘いも多くの公害に共通の課題として突破していかなければなりません。
 公害被害者総行動は、1976年から今年で38回目を数えます。毎年全国各地の公害被害者・市民団体が首都東京に集い、「なくせ公害、守ろう地球環境」 の合言葉のもと、大きな成果を勝ち取ってきました。
 私たちは、汚染土壌の復元を成し遂げたイタイイタイ病の闘い、薬事法の改正と医薬品副作用救済度を創設させた薬害スモンの闘いなどに学び、築いた成果を引き継ぎ、環境と平和を守るため、今後とも全国の仲間、国民の皆さんと団結して前進を続けることを訴え、参加者全員のアピールとします。

2013年6月6日
第38回全国公害被害者総行動総決起集会