(第35回総会・大阪)

 昨年5月16日,福岡高等裁判所は,国営諌早湾土地改良事業(諌早湾干拓事業)の続行禁止を命じた佐賀地裁仮処分命令を覆した。これにより,約9ヶ月間中断していた工事が再開し,国は平成18年度中の完成を目指し急ピッチで工事を行っている。 この間も,諌早湾干拓事業によって,有明海異変と呼ばれる深刻な環境破壊は続き,ノリ養殖業をはじめとする有明海の漁業は壊滅的な打撃を受け,有明海沿岸では,相次ぐ漁業者の廃業や自殺,心中事件があとをたたない。
 今,このような被害の継続・拡大の悪循環を断ち切り,有明海漁業を蘇らせるための真の有明海の再生と漁業被害の救済が求められている。
 そして,真の有明海の再生と漁業被害の救済のためには,諌早湾と有明海を分断する潮受堤防の南北両排水門を開放し,潮受堤防の内側の調整池に海水を導入し,かつての有明海の早い潮流を取り戻すことが不可欠であることは論を待たないところである。
 農水省が自ら設置したノリ第三者委員会も中長期の開門調査の実施を提言しており,福岡高裁決定も,国に中・長期開門調査の責務があることを指摘している。
 それにもかかわらず,国は,中・長期開門調査をサボタージュし続けており,有明海の環境悪化と漁業被害の拡大に拍車をかけている。
 有明海における漁民らの窮状に鑑みれば,真の有明海の再生むけた潮受堤防南北両排水門の開放と,諌早湾干拓事業の中止は,一刻の猶予も許さないものである。
 これ以上悲劇を拡大させぬよう,国に対し,直ちに本件干拓事業を中止し,潮受堤防南北排水門を開放し,真の有明海再生と漁業被害救済に向け,真摯かつ早急な取り組みを開始するよう求めるものである。

2006(平成18)年3月18日
第35回全国公害弁護団連絡会議総会