(第35回総会・大阪)

 東京高等裁判所民事24部(大喜多啓光裁判長)は、本年2月23日、行政側の控訴を容認し、あきる野市牛沼地域の圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設に関する国土交通大臣の事業認定(2000年1月19日)、及び東京都収用委員会の収用裁決(2002年9月30日)の取り消しを否定する判決を言い渡した。事業認定及び収用裁決を違法として、これらの取り消しを認めた東京地方裁判所判決(2004年4月22日)を全面的に覆すものである。
 そもそも、圏央道の建設事業は、1970年代の成長期に計画され、いわゆるバブル期を通じて具体化されてきたものであり、前提とされた各地域の開発や物流などの建設目的はすでに失われている。にもかかわらず、高裁判決は、その公共性を安易に認めたうえ、一般道を走行しても5,6分しか要しない1.9キロメートルの間に巨額の費用を要するインターチェンジを二つも設置することをも容認した。
 他方で、判決は、圏央道が建設されることによって激化する大気汚染や騒音問題などの道路公害を否定した環境アセスメントを鵜呑みにし、SPMの予測が行なわれていないことまで正当化した。さらには、自然環境や文化遺産の破壊、長年住み慣れた住居を移転しなければならない住民らの犠牲をも無視したのである。
 判決は、住民らが事実をもって指摘し続けてきた圏央道建設によって生ずる道路公害など深刻な問題に目をつむり、一審判決で瑕疵ある道路と批判された圏央道の建設を容認したものであり、司法の役割を放棄した行政追随のきわめて偏頗な判決といわざるをえない。それは、無駄な公共事業や道路公害の激化に対する国民の批判を無視し、公害反対や環境保護を求めている全国の住民の運動に敵対するものであるのみならず、無駄で有害な20世紀型の公共事業から決別して、環境保全型への転換をはかっている国際的な流れにも逆行するものであって、断じて許し難い判決である。
 私たちは、本判決に断固抗議し、最高裁において本件事業認定・収用裁決の取り消しを認める住民勝訴の判決を求めると同時に、行政に対して、圏央道建設計画そのものを抜本的に見直すことを求めるものである。そして、無駄な公共事業、環境破壊と道路公害に反対して、最後までたたかうものである。

 以上決議する。

2006(平成18)年3月18日
第35回全国公害弁護団連絡会議総会