水俣病に時効なし
〜9・14公害弁連シンポジウムの成果〜

弁護士 板井俊介

1  熊本での9.14シンポ
 平成19年9月14日午後,熊本県庁裏テルサ会場において,ノーモア・ミナマタ訴訟弁護団の呼びかけにより,ノーモア・ミナマタ訴訟における法律上の争点である除斥論をテーマとしたシンポジウムが開催された。なお,2007年度公害弁連第3回幹事会も兼ねたものとなった。
 会場は,公害弁連幹事,加盟弁護団をはじめ,ノーモア・ミナマタ訴訟原告団及び弁護団総勢約150名が駆けつけ満席状態であった。諸先輩には遠路はるばる熊本までおいで頂き,心より感謝申し上げる次第である。

2  被害から時効・除斥を斬る
 パネリストとして,水俣病訴訟弁護団から馬奈木昭雄弁護士,筑豊じん肺訴訟団から小宮学弁護士,除斥期間の研究者である鹿児島大学法科大学院の采女(うねめ)博文教授をお招きし,ノーモア・ミナマタ訴訟弁護団から板井俊介がコーディネーターとなった。
 まず小宮弁護士は,長崎じん肺訴訟での消滅時効起算点論での苦悩,それを乗り越え筑豊じん肺最高裁判決で損害発生時説に則ったじん肺死時説の獲得,さらに,福岡地裁で平成19年8月1日に言い渡された西日本石炭じん肺訴訟判決(法定合併症時説)までの経験を述べた。そして,除斥論の現状を,本来無味乾燥の除斥論に「正義の観点」を導入することに成功したものと評価され,最後に「徹底的に被害を見つめることから『じん肺に時効なし』の大原則を打ち立てた」と語った。
 采女教授は,除斥期間に関する最高裁判例の潮流を冷静に見つめながら,水俣病関西訴訟最高裁判決では被害の捉え方が甘く,除斥期間での勝利のためには被害論を組み直す必要があると説かれ,弁護団にエールを送った。
 最後に,馬奈木弁護士は,水俣病関西訴訟最高裁判決の論理矛盾を厳しく指摘しながら,「水俣病の被害抜きに除斥期間を論ずることは完全な誤り。昭和48年の第1次訴訟判決でも同じ時効の論点で既に指摘されている。第1次訴訟判決に学ぶべきところは,とてつもなく大きい」と明言されました。そして,除斥期間制度は,悪い者を許す制度ではない以上,まずは主張自体を許さない姿勢を取り,その上で起算点論を主張すべきという助言を頂いた。
 コーディネータをつとめた私を含めノーモア・ミナマタ訴訟弁護団員は,この諸先生の発言をお聞きし,理論を追い求めるのみでは真の水俣病問題での勝利はないのだと深く深く教えられた。

3  水俣病に除斥なし
 水俣病の被害は,重症患者さんの場合でない限り「目に見えにくい」側面がある。しかし,「目に見えない」から「被害がない」わけではなく,我々はそのことを知ると同時に裁判所にも広く世の中にも訴える必要がある。
 「水俣病に除斥なし」。今回のシンポにより,ノーモア・ミナマタ訴訟弁護団は大きな教訓を得た。我々弁護団は,必ず除斥を乗り越えた判決を獲得し,それを水俣病問題の歴史に刻む決意である。