2008年度韓国司法修習生日本研修感想文

韓国司法修習生代表
 永根
李 東熙

 韓国司法研修院の環境法学会は専門研修期間に日本の公害環境訴訟経験を聞いてその現況を探り、以前に発生した公害被害と救済はどのようになり、現在はどのような救済策を持っているのか、また環境被害について具体的にどのような対処策を持っているのかなどを学ぶと同時に、これらとかかわった実践事例を直接見て、感じることで環境法および環境訴訟に対する理解を深めるために日本研修に行くことになった。
 特に、韓国は過去環境と関連した紛争が発生した時、先ず住民と環境団体がデモをして解決しようとする動きがあったが、最近になっては訴訟を通じて解決しようとする傾向が多くなっている。このような状況から日本研修を通じて法律家として環境法律専門家になるために外国の訴訟事例を知る機会になると思った。
 元々は2008年7月2日から16日まで日本研修を行なう予定であったが、日本の事情で7月1日から15日に変更された。以下は日本研修を通じて学んで経験した内容について触れることにする。
 諫早干拓事業は韓国のセマングム干拓事業と大変類似していた。目先の利益のために海を埋め立て、干潟を基盤に生きてきた住民の生計を駄目にし、干潟の水質浄化機能のような目に見えず金銭的に換算できない利益を失い、しかも干潟を再び取り戻すことはできないことを自覚しなければならないと思った。
 東京の霞ヶ関の農林水産省の前で有明原告団と弁護団が政府に控訴の取り下げを求めて集会を開いている場面を目撃しながら、外国人で公務員の身分という立場から集会に参加できなかったのが心残りである。
 大阪で多くの弁護士先生に会い、彼らの熱情と献身、そして被害者を救済しようとする姿勢、公益のための心遣いなどを学ぶことができた。このような意志を持っている弁護士先生が多いことを見ながら、日本の力はこのようなところから出てくるのではないだろうかと思うようになった。
 東京地方裁判所で裁判を傍聴したが、韓国の法廷の構造とは多少差異があり、韓国でも最近行っているパソコンを用いた裁判が普遍化しているように見えた。
 日本司法修習生との出会いはとても嬉しかった。今までは日本の環境訴訟を引っ張ってきた著名な弁護士先生に会って学ぶ姿勢であったが、我々と同じ立場にいる日本司法修習生に会うことで理解を深めることができた。日本司法修習生は韓国のように外国で研修を受けるプログラムがないと言ってとても羨ましがっていた。
 公害等調停委員会の担当業務は土地利用調停制度、土地受容に対する意見提出などで韓国より包括的で権限も大きい気がした。また、日本は決定形態として斡旋、調停、仲裁、裁定があるが、韓国には仲裁がない。日本で仲裁がほとんどないことから考えて、韓国でこの点を考慮したのではないかと思った。一方、日本では当事者合意を誘導して紛争を解決する調停が大部分を占めているが、韓国では法律的判断で因果関係および責任有無を定める裁定が大部分を占めることでも差異があった。また、韓国では最近の法改正で2008年9月21日から調停の効力で裁判上和解が認定されるが、日本では民事上和解の効力だけ与えていることでも差異があった。
 環境省では京都会議の遂行のために多くの努力をしているという印象を受けた。環境問題はある一つの国の問題ではなくて全世界が協力しなければならないということに意見を共にした。
 以上のように日本研修を通じて日本の代表的な環境訴訟について見て、聞きながら韓国より進んだ環境問題に関する意識を持っている弁護士先生が多いことに気がついた。また、環境訴訟に参加している弁護士先生が熱情と自信に溢れて働く姿を見ながら、日本から学ぶ点が多いと思うようになった。
 一方、日本研修が終わるころに韓国司法修習生は日本での生活と食べ物に多少飽きてきて韓国に早く帰りたいと思うようになった。日本研修はとても学ぶ点が多かったが、今度の研修を通じて我々が韓国人であることを今更のように自覚したことが記憶に残るであろう。
 今度の日本研修を多く助けてくださった金恵珍、通訳を担当してくださった方々、そして自分達の経験談を聞かせてくださった弁護士先生と関係者の方々に深く感謝したい。
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