公害弁連第38回総会議案書
2009.3.29  東京
【3】 特別報告
全国公害被害者総行動実行委員会報告
全国公害被害者総行動実行委員会
事務局長 中山裕二

はじめに

 昨年12月、雪の立山連峰を望む富山市の富山県民会館で合宿会議を行いました。イタイイタイ病裁判提訴40周年を記念するシンポジウムが同市で開催されたことにあわせて行ったものです。
 シンポジウムが大成功したことは、いうまでもありませんが、この合宿も2009年第34回総行動にむけた私たちの課題を鮮明にする議論ができました。小松義久代表委員が、二日間の全日程にわたって参加され、近藤忠孝弁護士とともに貴重なアドバイスをいただき、公害被害者運動の原点、原則をあらためて学びました。
 会議日程が終わってから参加者有志で清流会館を訪ねましたが、イタイイタイ病運動の歴史の重さを感じることができました。

第33回公害被害者総行動とその後のたたかい

 2008年第33回総行動は、6月2日夜、日比谷公会堂で110団体、1,200人が参加した決起集会を軸に、翌3日にかけて関係省庁、財界、加害企業などちょうど30の部署、部局とのいっせい交渉、霞ヶ関でのデモ行進などを行いました。
 33回総行動は、全国各地で公害・薬害被害者、環境を破壊する無駄な「公共」事業に反対する仲間のたたかいを反映して、手前味噌ではありますが、わが国の諸運動の中でも質、量ともに高い到達点を示すものでした。そして、東京大気の勝利とその確信を「水俣」と「有明」のたたかいに引き継いでいくことを明確にしました。 33回総行動後、東京で大気汚染裁判をたたかった仲間は、確信を深め、医療費助成制度をひろめる運動と仲間を増やす活動に精力的に取り組んでいます。
 有明のたたかいは、昨年6月27日に下された排水門開門を求める佐賀地裁判決を勝ち取り、水俣では、洞爺湖サミットにむけた壮大な全国縦断キャラバンを成功させ、与党プロジェクトチームによる大量切捨ての策動とたたかいながら、ノーモアミナマタ訴訟の原告団拡大に取り組んでいます。
 道路関係では、ミシュランガイドで三ツ星に評価された高尾山のたたかいが、最高裁を舞台にすすんでいます。
 また、大阪・泉南地域でアスベスト国賠訴訟をたたかう仲間を実行委員会の迎えることができたことは、特筆すべきことです。今後アスベスト問題が全国化することは必至であり、とりわけ東京、神奈川の建設アスベストのたたかいの連携を強めていかなければなりません。

第34回にむけて

 先の富山合宿、今年1月の第1回実行委員会では、第34回公害被害者総行動の中心課題を昨年同様、①大気のPM2.5の環境基準設定と被害者救済制度の確立、②ノーモアミナマタ訴訟の勝利と被害者の司法救済、③有明、道路など環境を破壊する無駄な公共事業を食い止める、④薬害イレッサ訴訟の勝利、⑤地球温暖化と確認しています。現在進行中の裁判をかかえるたたかいを中心にすえていきます。また、アスベストをたたかう仲間を迎えたことにより、泉南アスベスト訴訟の勝利とともに、首都圏でのアスベストのたたかいと結んで、事前準備の段階から協力をお願いし、また総行動本番でも連帯したたたかいをすすめていきたいと思います。6月までに情勢の激変が予想されますが、準備を抜かりなくすすめていきたいと思います。
 34回総行動は、6月1日〜2日にかけて、1日夜の日比谷公会堂での総決起集会を軸に例年どおり2日間にわたって行います。

公害被害者救済の課題

 ところで、水俣病や大気汚染公害など公害健康被害補償法で認定された患者は、年月の経過とともに激減しています。水俣病は、幾多の判決で認定基準が批判されたにもかかわらず、環境省が基準の見直しを行わなかったからです。それどころか2004年最高裁判決後の認定申請者の激増のまえに、公健法で自ら定めている認定審査会すら機能させることなく、7,000名の認定申請者を5年近く放置しています。大気汚染公害では、1988年の汚染指定地域解除以来、新たな認定患者はいなくなりました。
 しかし、我が国の公害は、決して改善されていません。水俣病では、1,500人をこえる原告団で新しい裁判をたたかっていますし、診断書をそえて何らかの症状があるとして声をあげている被害者は、3万人に近づいています。大気汚染公害においても東京で切り開いた医療費助成制度を全国に広げていくことが課題となっています。薬害も合わせて、公害・薬害被害者が存在する限り、その被害を補償し救済する仕組みを作り上げなければなりません。被害に見合った補償、救済の仕組みをどのように構築していくのかが、私たちの大きな課題です。
 公害被害者運動の原点はここにあると思いますし、私たちの団結の要です。
 今後とも公害弁連の先生方としっかり団結してたたかっていく決意です。



追伸

 この原稿を書き上げたころ、熊本の地元紙が中国大陸からの大気汚染物質の長距離異動について報道しました。「煙霧」という気象現象だそうですが、粒子状物質が大気中に漂い視程が10キロメートル未満になるものです。
 冬の時期には偏西風が強まり、地理的には長崎県、熊本県が影響を受けやすく、たとえば普賢岳山頂の霧氷が強酸化していることが確認されています。また、水銀の濃度が2倍に上昇したり、光化学オキシダントも高濃度化しています。
 対応として、長崎県の環境保健研究センターの専門家は、PM2.5を測定することやこれらの環境基準を早期に設定することの重要性を述べています。
 PM2.5の環境基準は、都市部の問題だけではなく、地方のしかも国境を越えた地球規模の対応に役立つものにならなければならないと思います。
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