公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
【1】 基調報告
第3  公害裁判の前進と課題
6  国際交流の前進と課題
 2005年も、公害弁連が築いてきた国際連帯の絆を、一層強め、深める年となった。
 2005年8月25日〜28日、公害弁連は、他の日韓4団体との共催(日本側共催団体は環境法律家連盟。韓国側共催団体は、グリーンコリア環境訴訟センター、韓国環境運動連合環境法律センター、「民主化のための弁護士の集い(民弁)」環境委員会)で、「第2回日韓公害・環境シンポジウム」を開催した。
 2002年夏に、はじめて日韓の公害・環境法律家団体が結集した「第1回日韓公害環境問題シンポジウム」(於・ソウル)から3年。この間、さまざまな機会を通して深めてきた連帯を再確認するとともに、公害根絶、環境保護のための経験を交流すべく企画された今回のシンポジウムには、日本から、公害弁連の近藤忠孝代表委員を団長として、弁護士だけでなく、研究者、学生、公害被害者、環境NGOスタッフら50余名が訪韓団を組み、参加した。1日目は清渓川復元事業現場訪問、2日目はシンポジウム、3日目はセマングム干潟干拓現場訪問という日程だったが、日本側は、環境という視座からダイナミックな社会変革に取り組む韓国の若いエネルギーに改めて大きな刺激を受け、韓国側は、日本の反公害闘争の経験の蓄積に、並々ならぬ関心を見せた。
 このシンポジウムでの交流を端緒に、個別具体的な課題や事件での日韓交流も進展した。
 シンポジウム3日目のセマングム干潟訪問等の機会を通して韓国の漁民、弁護士との信頼関係を築いた「よみがえれ!有明海訴訟弁護団」は、2005年12月9日、韓国から弁護士、市民運動家を招き、「有明・セマングム共同シンポジウム」を開催し、公害弁連は、これを後援した。
 また、シンポジウムの機会に、韓国の千聖山トンネル計画に反対する環境運動家らと出会った「高尾山天狗訴訟」の訴訟団、弁護団も、その後、相互の現地訪問を実現させるなど、交流を深めている。
 一方、中国との交流では、2005年11月26日から27日にかけて上海の地で開催された「第3回環境被害救済(環境紛争処理)日中国際ワークショップ」に、公害弁連から、近藤忠孝代表委員、村松昭夫副幹事長が参加し、中国側と大いに討論を深めた。この上海でのワークショップには、2005年夏のソウルでのシンポジウムの韓国側の中心をつとめた弁護士(環境運動連合所属)も参加した。その際、2007年夏にソウルで開催が予定されるアジア環境会議の機会をとらえ、日中韓3カ国のシンポジウム等を開催する発案が、中国側から提示された。
 一方、2003年まで毎年実施していた韓国の司法修習生の日本における研修の受け入れは、2004年に引き続き、今年度も実現しなかった。当初は、韓国側から修習生派遣の打診があり、公害弁連としても歓迎する意思を示していたが、韓国の司法修習制度の改変から、来日が困難となる事情があった。
 言うまでもなく、公害、環境問題は、全人類的課題である。特にアジアでは、急激な工業化、自動車交通の増加、日本の公害輸出、各国の経済成長優先政策等により、深刻な被害が発生して来ている。これに対し、各国では、環境保護、公害被害救済を目指す市民、法律家が立ち上がり、エネルギッシュな活動を展開している。
 日本は、戦中、戦後の歴史を通し、アジアの政治、経済、社会の健全な発展を阻害し、環境破壊、公害被害の発生を助長してきた。公害弁連は、単なる地球村の一員としての責任にとどまらず、これらの歴史を踏まえた責任を、アジア諸国に対して負っている。
 環境保護、公害被害救済を目指して立ち上がった各国の市民、法律家との連帯をいかに広げ、深めるのか、2006年も公害弁連の旺盛な取り組みが求められている。