公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
【よみがえれ!有明海訴訟関係】

声明
有明海における干拓事業漁業被害原因裁定申請事件の裁定にあたって

2005年8月30日
有明海における干拓事業漁業被害原因裁定申請事件弁護団

 本日,公害等調整委員会は,漁業被害の原因は諫早湾干拓事業にあるとして,2003年4月16日に有明海漁民が申請した「有明海における干拓事業漁業被害原因裁定事件」について,17名の漁民全員の申請を棄却した。
 今回の裁定にあたって,公害等調整委員会は,4名という異例の数の研究者を専門委員に任命し,10回の審問と2日間の現地調査,申請人である漁民ならびに漁民側と国側の双方から申請したそれぞれ3名づつの研究者証人の尋問を行った。専門委員は,これまでの研究成果を踏まえ,独自のシミュレーション調査を行うなどして,詳細な報告書を提出した。
 専門委員報告書は,魚種と漁場ごとに漁場環境の変化を検討している。その結果,本件干拓事業との関連性について,諫早湾近傍場については明確に結論づけることができるとし,それ以外の漁場についても,強弱の程度の違いはあるものの可能性を肯定している。
 本来,このような専門委員報告書を踏まえるならば,法的因果関係の認定は十分に可能である。
 しかるに今回の裁定は,専門委員報告書のこうした到達点があるにもかかわらず,客観的データの蓄積や科学的知見がなお不十分として,申請を却下した。
 こうした裁定委員会の判断は極めて遺憾であるといわざるをえない。
 本来,中長期開門調査をサボタージュして客観的データの蓄積と科学的知見の前進を阻んでいるのは農水省である。このような判断が許されるなら,サボタージュしたものが勝ちということになり,正義の理念に著しく反することになるのは明らかであろう。
 われわれは,こうした不当な裁定にくじけることなく,有明海を宝の海によみがえらせるため,最後まで全力を尽くす決意である。