〔3〕西淀川大気汚染公害訴訟報告
西淀川大気汚染公害訴訟弁護団
1 第9回西淀川道路連絡会
2005年5月7日、患者会・あおぞら財団関係者、弁護団、地域の人たちを含む80名の参加で、国土交通省近畿整備局、阪神高速道路公団との第9回西淀川道路連絡会が行われた。
近畿整備局は、担当者が頻繁に交代していることもあって、加害者意識どころか当事者意識すらも次第に薄くなり、それまでは曲がりなりにも、これから行おうとしている対策を一応報告していたが、前回の連絡会では全く具体的な対策を考えていような対応を示すようになってきていた。他方、大阪府内では濃度は改善しているとはいうものの、西淀川区の自排局では、出来島測定局では、平成15年度、16年度ともNO2は環境基準をオーバーしており、SPMも平成15年度は短期的評価では環境基準をオーバーしている。また、近畿整備局が管理している歌島測定局でも、平成16年度でSPMが短期的評価で環境基準をオーバーしているという状況にある。和解成立後7年を経過してこのような状態であることに対して、前回の連絡会では、近畿整備局も汚染の最大の原因が大型車であることを確認したが、大型車規制についての具体化は提示されていなかった。
また、地下道設置に伴う横断歩道の撤去をめぐっての歌島橋交差点問題については、歩行者に対して車優先の考えに立つものであり、患者会独自の課題ではないが、近畿整備局が、環境問題を口実に行われていることからも見逃せないものとして、この連絡会で取り上げているものである。近畿整備局は、この件について、前々回、前回と「住民合意」で行うと約束し、前回はそり方について、協議すると約束しながら、今回の連絡会に向けてはそれを反故にするような対応を示してきていた。
この第9回の連絡会では、このような状況の中で、行われたものであったが、患者会からの、公害対策をきっちりと行い、1日も早くきれいな空気にしてほしいとの切実な訴えに対して、近畿整備局は、大型車の総量規制が課題であることを認めたものの、具体的な対策は提示せず、8月を目途に大型車対策を検討したものを報告するに止まった。しかし、連絡会の後、近畿整備局から具体的な大型車対策は未だ提示されていない。
歌島交差点問題については、近畿整備局は、すでに連合町会長会の許可を得たとの一点張りで、このことで環境がよくなるかどうかも含めて具体的に示さず、原告団や住民を無視した非民主的なやり方で進めるとの態度を示し続けた。連絡会の後、8月9日には2つの横断歩道が実際に撤去されてしまったが、患者会は今後この問題について引き続いて街づくりを考える会と協力しながら進めていくことにしている。
2 企業和解10周年記念のつどい
西淀川公害裁判は、1995年に企業との和解が成立したが、それから10年、西淀川公害患者と家族の会は、和解金の一部を基に(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)を設立し、地域と環境の再生をめざした取り組みを進めてきた。2005年10月10日には、その10年を振り返り、今後を展望する「手渡したいのは青い空」10周年記念のつどいが開かれた。
つどいでは、弁護団、民主団体、一般の参加者と含めて250名の参加を得て、豊田誠弁護士から、「西淀川公害裁判の歴史的意義」と題しての記念講演やあおぞら財団の理事でもあるアグネスチャンさんから「子どもたちに青空を」をテーマにしたメッセージ・トークなどが行われた。
3 西淀川・公害と環境資料館オープン
裁判後の課題の一つとして公害経験の継承があるが、これまであおぞら財団を中心として、地元の人たちや歴史研究者等の協力を得て、被害や裁判・運動等の資料の収集・整理を行い、1996年から西淀川地域資料室が開設され、企画展示を開催し、整理した資料の貸し出しや閲覧サービスを部分的に行ってきていた。このような活動を土台にして資料の保存・活用をはじめとする資料室の活動を資料館として一層充実・発展させるための計画が立てられ、2005年7月21日に「資料館運営委員会」が立ち上げられた。その結果、2006年3月に、「西淀川・公害と環境資料館」としてオープンすることになり、3月18日にはそのオープン記念シンポジウム「環境再生の時代に公害経験から学ぶ―公害・環境問題資料の保存と活用にむけて―」が開かれることになった。
4 さいごに
1998年の国・阪神高速道路公団との和解により裁判は終了したが、今後とも、患者会とともに公害根絶を目指して活動を行っていくとの確認で、弁護団体制を残している。
しかし、前記2、3で述べた活動は、弁護団活動の一環とは言っても実際は患者会や財団の活動に弁護団が参加しているというものである。1の道路連絡会の活動については、文字通り弁護団としての参加であり、それに関連しての西淀川道路検討会が学者・研究者・地域の人たちを交えて50回以上も続いており、すでに5つの道路提言が生まれており、現在そのパート6を作成中である。このような状態であり、弁護団として、より実質的な活動を行うよう心がけたいと思っている。