公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
【1】 基調報告
第3  公害裁判の前進と課題
4  廃棄物問題のたたかいの前進と課題
1  アスベスト問題
 06(平成18)年2月3日、いわゆるアスベスト「救済法」が成立した。
 同法は、労災以外の被害者や遺族に対して、救済給付として医療費、療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金を支給することを柱としている。1970年度から2010年度までに対象者に支払う給付金総額は700億円規模となり、給付金の負担については、06年度分までは国や都道府県の公費支出とし割合を4対1とすること、07〜10年度分は石綿関連企業に全額負担を求め、労災を多く出している企業にはより多くの負担を求める「二階建て方式」にするとされている。
 同法に対しては、産業界からは、個人事業主を除く約260万の全事業主から労災の仕組みを使い広く薄く徴収することに対して、石綿と関係ない事業者も含み責任の所在が曖昧になるという反発が出ている。
 また、被害者救済に関しては、対象疾病として、中皮種と肺ガンが挙げられているが、肺ガンについては、石綿が原因かどうかを見極めることが難しく、専門医の数も少ない。したがって、「疑わしきは認定」を原則として、広く救済が行われるべきであり、石綿肺などが除外されている点も問題である。
2  フェロシルト問題
 石原産業(大阪市)が製造したフェロシルトを使用した土壌から、環境基準を超す六価クロムとフッ素が検出された。フェロシルトは、酸化チタンの製造過程で出る廃硫酸を再利用した土壌埋戻し材で、三重県からリサイクル商品として認定を受けていた。ところが、石原産業は、別の工程から出た重金属を含む廃液を混入していたため、東海3県(愛知、岐阜、三重)を中心に土壌汚染が拡大している。
 石原産業は、フェロシルトをリサイクル商品と説明してきたが、実際は中間業者に販売価格を上回る費用(産廃引き取り料)を支払っていたことが判明し、廃棄物処理法違反が明らかになった。
 東海3県は、フェロシルトの撤去命令を出して土壌汚染拡大の防止を図ろうとしているが、最終処分場は、重金属に汚染されたフェロシルトの搬入を拒絶する動きを見せており、約72万tといわれるフェロシルトの完全撤去までには曲折が予想されている。
3  リサイクル制度の問題点
 05(平成17)年1月から、自動車を廃車処分にする際にかかるリサイクル料金の支払いを義務づける自動車リサイクル法が施行された。1年間に、国内を走る自動車の5割超がリサイクル料金を支払い、新制度は順調に滑り出した。
 他方、使用済み自動車(廃車)と処理台数に100万台超の開きがあり悪質な解体業者による違法処理が行われているという指摘がある。また、輸出される自動車はリサイクル料金を納めなくて済むため、廃車寸前の自動車を輸出して法律の適用を逃れる業者も存在する。自動車リサイクルの仕組みが、完全に定着するためには時間を要する見通しである。
 環境省は、容器包装リサイクル法の改正案を通常国会に提出し、レジ袋を有料化して増え続けるプラスチックごみの減量化を計画している。レジ袋は、国民1人当たり年間約300枚を使用しており、プラスチックごみの減量化には、レジ袋を有料化して消費者がマイバックを持参するよう誘導することが不可欠と判断した。
 環境省は、当初レジ袋の無料配布を禁止することを検討したが、営業の自由を侵害するという議論もあり、小売業者にレジ袋の削減量と有料化を自主的に決めてもらい、国がこの取り組みを支援するという方法に改めた。スーパー業界は有料化を法律で義務づけることを主張しているが、コンビニ業界は有料化に反対しており、今後意見集約が難航することが予想される。
4  各地の闘いの成果と課題
 05(平成17)年2月には長野県伊那市の産業廃棄物焼却施設について、最高裁が業者の上告を受理しない旨の決定を下し、稼働中の焼却施設の操業差止を認めた裁判が確定した。また、4月には長野県駒ケ根市の産業廃棄物焼却施設(東京高裁)、
 5月には千葉県富津市の安定型処分場(千葉地裁木更津支部)、7月には茨城県水戸市の安定型処分場(水戸地裁)で建設・操業を差し止める仮処分決定・一審判決を支持する勝訴判決を住民が勝ち取っている。
 さらに、8月には京都市のごみ処理施設建設をめぐり、談合により落札価格が不当につり上げられたことを理由に公金支出の差止を命じた判決が下された(京都地裁)。
 他方、11月には、東京都の谷戸沢処分場をめぐる土地収用法に基づく事業認定・収用裁決取消を求める裁判では、住民の請求が退けられた(東京地裁)。また、5月には千葉県海上町の管理型処分場(東京高裁)、茨城県水戸市の安定型処分場(東京高裁)で操業差止を求めた住民の請求を退ける裁判が下された。
 このように、安定型処分場、小型の産廃焼却施設について、住民勝訴の事例が着実に積み重ねられているが、大型の管理型処分場及び焼却施設(自治体ないし第三セクター運営)については、ダイオキシン類・環境ホルモンなどによる汚染を理由とした住民の申立てが退けられている。