公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
【新横田基地公害訴訟関係】

新横田基地訴訟高裁判決に当たっての声明

1 本日、東京高等裁判所は、新横田基地騒音公害訴訟について、米軍機による基地周辺住民の騒音被害を認め、国に対し総額約32億5000万円の損害賠償を命ずる判決を言い渡した。1981年(昭和56年)7月の第1・2次訴訟地裁判決以来本判決に至るまで、7度にわたって横田基地における米軍機の騒音の違法性が認定され続けてきたものであり、同基地が周辺住民に深刻な被害をもたらす欠陥空港であることが改めて認定されたものであるとともに、最高裁判決以降も国防の名の下に違法な騒音が放置され、基地周辺住民に受忍を強いていることを「法治国家のありよう、から見て異常の事態」であるとして、立法府の怠慢を含め国の無策を厳しく断罪した判決である。
2 本判決は、横田基地における米軍機の騒音により、周辺住民は人間らしい平穏な生活を脅かされており、その被害は住民全員に共通するものであることを端的に認め、被害陳述がなされていないことを理由に一審判決で請求を斥けられた被害住民をも広く救済の対象とし、その範囲もWECPNL値(うるささ指数)75の地域まで被害地域と認めた。これは、本年2月の新嘉手納基地訴訟地裁判決が従来の裁判例に反して救済水準を値85まで大幅に切り下げたのを事実上否定したもWのであり、W値75以上の地域の住民について共通の被害が認定されることが裁判例上確立したものであることを、改めて確認するものであると言ってよい。
 また、本判決は、いわゆる危険への接近論による賠償額の減額や免責を求める国の主張を排斥した。被害地域に居住する住民に何らの落ち度が認められないこと、その一方、国は国民の生活環境を保全する義務を怠り続けていることを正当に認定し、真の公平の実現を図るものとして評価に値する。
3 他方、本判決も、基地周辺住民の切実な願いである夜間早朝の飛行活動の差止めを認めなかったものであり、昨年12月27日に同じ東京高裁が合衆国政府を被告とする訴訟について訴えを不適、法としたこととあわせれば、騒音発生源を放置し、住民の新たな被害を黙認するに等しく、加えて将来にわたる賠償請求も本判決までの1年間の短期間に限って一部認容とした点を除き排斥したことは、根本的な解決を先送りするものとして、司法の無力を指摘せざるをえない。
 また、騒音による被害が何ら軽減していないにもかかわらず、安易に被害地域を狭める平成10年コンターを採用したことにより約1割の原告の請求が棄却されたことは大いに問題である。
4 しかしながら、本判決が、横田基地における米軍機の違法な騒音により周辺住民が深刻な被害を被っていることを認定した事実は極めて重大であり、被告国は、本判決を単なる賠償命令としてではなく、被害軽減についての無策を厳しく断罪するものであるとともに、現在推し進められつつある騒音コンター縮小による救済切り捨て、地元住民を無視した在日米軍再編、軍民共用空港化に対しても警鐘を鳴らすものとして深刻に受け止めなければならない。政府の行為によって国民が災禍を被ることのないように努めることが被告国の義務であることは疑いないからである。
5 私たちは、本判決より獲得した成果を基礎に、人間らしい生活と静かな眠れる夜を取り戻すため判決の指摘する救済制度創設要求を含め、今後も騒音被害根絶を目指す所存である。

2005年11月30日
新横田基地公害訴訟団
新横田基地公害訴訟弁護団