公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
〔4〕 尼崎公害訴訟「連絡会」報告(ロードプライシング実施)
尼崎大気汚染公害訴訟弁護団


1 総合調査(05年3月3日)実施について
 公調委あっせん合意成立後の大型車規制に関する総合調査実施、これを踏まえて大型車規制の可否について警察庁へ検討依頼するというスケジュールは03年6月のあっせん合意から2年半を経ても未だ検討依頼文書を提出する段階に至っていない。尼公害道路公害訴訟原告・患者会、弁護団は辛抱強く「連絡会」で国交省・公団と協議を続けてきた。昨年1月21日の第11回連絡会で「大型車の交通量低減に向けた総合調査」について合意が成立、この調査は05年3月3日に行われた。このアンケート調査は、大型車の交通量低減を目的とした調査としては初めてのもので、規模・内容ともそれなりに評価できるものである。調査概要は以下の通りである。
 05年2月10日から3月2日にかけ、調査票が配布され、3月3日AM6時から翌4日のAM6時まで調査、調査票の回収は3月4日から25日までに行われた。心配された回収率であるが、対象事業所への実配布数は5598通、無回答を除く有効回収は2492通、ドライバー・運行管理者への実配布数は1万1122通、調査当日、43号線や阪神高速神戸線・湾岸線などの対象路線を大型車で通行したとの回答をした有効回答数は2228通、有効回収率は前者が45%、後者は20%であった(ドライバーへの調査票自体の回収率は54%)。

2 総合調査(ドライバー・運行管理者アンケート)の分析
 この調査・回収結果に基づき、新年度05年度から分析が開始された。この間、6月2日に第12回連絡会、9月16日に第13回連絡会が開催され、アンケート集計と分析結果については9月の第13回連絡会から説明と意見交換が行われた。これを踏まえ11月16日の第14回連絡会で、報告されたアンケート調査結果の概要は以下の通りであった。
(1) 43号線や阪神高速神戸線を通行するドライバーが、湾岸線の割引額をどの程度にしたら湾岸線に変更するのかについては、湾岸西線(武庫川以西)通常料金1000円については500円台が最も多く、東線(武庫川以東)も含めた通常料金1400円については700円台する回答が最も多かった。西・東線通しでは1400円を1200円とした場合に変更するとの回答も多かった。
(2) ロードプライシングと併せて、ナンバー規制や車線規制を実施するパッケージ施策が大型車の路線変更に効果があるのかどうかについては、【43号線規制と湾岸線割引】の場合、@〔43号線ナンバープレート規制+湾岸線割引〕で549票が変更する、A〔43号線2車線規制+湾岸線割引〕で494票が変更する、B〔同1車線規制+湾岸線割引〕で459票が変更する、との結果であった。
 要するに、ロードプライシングの試行では、湾岸線を西線も東線も半額以上割り引くということが、あっせん合意事項中の「試行内容の一層の充実を図る」方向性であること、ロードプライシング充実と43号線規制のパッケージ施策で43号線からの大型車低減効果は一層効果的であることが明らかになったのである。これらは原告・患者会がこれまで主張してきたところであり、「大型車交通量低減のための総合調査」は所期の目的を達成したと評価できる。

3 警察庁への大型車規制検討依頼とロードプライシング試行
 この総合調査結果に基づき、交通規制の可否について警察庁への検討依頼という手順になるが、この間国交省から警察庁への検討依頼に先立ち、兵庫県警から別途交通量調査について照会及び実施依頼があった。この別途調査はあっせん合意にはないものであり、原告・患者会、弁護団としては当初から反対の意向を表明してきた。国交省は本件総合調査を3月3日に実施したのと平行して、05年3月1日と3月3日(平日)、3月6日(休日)に阪神間交通量調査(24時間)を実施しており、これとは別に県警からの調査を実施する必要性はないというのがその理由である。公調委へのあっせん手続で開示された兵庫県警の交通規制についての検討結果文書の内容からしても、今回の別途調査は、大型車規制の可否の結論を先取りする狙いがあるという危惧もあった。しかしながらその後、県警から要請のあった交通調査の内容は、確かに警察が阪神地域43号線の車線規制やナンバー規制を現実に実行するとなると必要かもしれないと思われる内容でもあり、その規模・予算からするとこれまで我が国では実行したことがないものであるとの評価もあった。詳細報告はできないが、原告・患者会としては賛成はしないが、反対はしないと結論し、この調査は別途進行中である。しかしながらこの調査は06年度の何時頃に完了するのか正確な時期が明確でなく、「連絡会」ではこの点も指摘したうえ、前記総合調査で明確になったロードプライシングの試行充実を先行することを確認・協議し、11月の第14回、12月の第15回連絡会で合意に達した。

4 ロードプライシングの具体的内容と実施時期
 12月21日に合意した環境ロードプライシング社会実験概要は、別紙の通りである。前記総合調査で示された方向性に従い、湾岸線の西線・東線を含む、どの区間についても半額に割引料金を設定した。「社会実験範囲」では湾岸線東線については「天保山」までとし、東線の料金区界では天保山で下りた大型車あるいは天保山からETCで乗った大型車が割り引き対象となる。ETC装着率は大型車も80%程度ではないかということであり、料金収受・割引清算方法からして技術的にETC車輌限定とすることは受け入れざるを得なかった。実は東線を社会実験範囲に取り込むことについては公団(阪神高速道路株式会社)の抵抗が強かった。それを克服できたのは、一重に連絡会が公開され、世論の支持を得られてきたことが原因と考えている。そして12月連絡会で国交省は、ロードプライシング試行にかかる予算との関連、あるいは社会実験実施についての宣伝・準備等で05年度内(06年3月末日)実施は困難と回答したが、我々としては引き続き年度内実施を実現すべく、本年2月9日実施予定の第16回連絡会で詰める予定である。いずれにしても漸く、大型車交通量の低減・交通の転換を目指す具体的施策が実行段階に入ることとなった。本年はさらに大型車交通規制の可否についての検討依頼文書の作成という課題があり、全国道路公害関連弁護団・原告団の皆さんのご支援をお願いする次第である。