公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【1】 基調報告
第2  公害裁判の前進と課題
4  「廃棄物問題の闘いの前進と課題」
(1)  リサイクル制度の改正・見直し
 06(平成18)年6月,改正容器包装リサイクル法が成立し,07(平成19)年4月から施行される。95(平成7)年に同法が施行されて以降,ペットボトルの回収率が大幅に伸び,容器包装廃棄物の分別収集や再商品化が進められた。改正法は,容器包装廃棄物の排出抑制と再商品化の促進を目的として,一定規模以上(年50t以上使用)の小売業者に,容器包装廃棄物の減量を求め,取り組みが著しく不十分な場合は,勧告・命令を行う措置を導入する。石油換算で50万kl,年間300億枚が使用されるレジ袋を中心に,小売業者に対して容器包装(レジ袋,紙袋,食品トレー,包装紙)の使用量を国に定期報告するよう求める。日本チェーンストア協会は,4年前からレジ袋辞退率40%を目標に買い物袋持参運動を呼び掛けてきたが,05(平成17)年の辞退率は13%に止まり,レジ袋有料化も視野に入れ検討を進めている。コープ東京は,92(平成4)年からレジ袋有料化を実施しているが,現在買い物袋持参率が7割前後で推移している。1世帯あたり1週間平均10枚使用するといわれるレジ袋の排出抑制が実効を上げるか否かは,小売業者の取り組みと消費者の意識改革にかかっている。
 農林水産・環境両省は,01(平成13)年に施行された食品リサイクル法の見直し作業に入っている。同法は,食品メーカーやコンビニエンスストアなどから排出される食品廃棄物の減量を目的として,一定量以上の生ゴミを出す事業者に20%削減を義務づけている。05(平成17)年に実施された農水省の調査によれば,食品廃棄物の削減率は,食品メーカー72%,食品卸売業41%,食品小売業28%となっており業者間にばらつきがあり,外食産業は17%と削減目標に届かなかった。そのため,達成度の高い業種の削減率を引き上げ,業種・業態別に規制する方法に改める。また,現在対象ではない学校給食も新たに対象に加え,07(平成19)年の通常国会に改正案を提出する予定である。
 経済産業・環境両省は,家電リサイクル法改正案の通常国会提出を見送った。
 同法は,01(平成13)年から施行され,家電4品目(テレビ,冷蔵庫,洗濯機,エアコン)のリサイクルを義務づけ,消費者が,廃家電を小売業者に引き渡す際,リサイクル費用及び運搬費用を支払う制度となっている。中古品業者のなかには,消費者から無料で廃家電を引き取り,再販売できる家電を独自ルートで売りさばき,使用できない家電は不法投棄するというケースが目立ち,04(平成16)年には同法施行前より5万台も廃家電の不法投棄が増加した。そこで,見直し作業では,リサイクル料金の前払いが焦点となった。ところが,05(平成17)年,両省が小売業者や中古品業者などにアンケートを実施した結果,廃家電4品目合計2287万台のうち,771万台が外国に輸出されていることが明らかになった。内訳は,再生可能な中古品が594万台,国内で処理され鉄くずなどのリサイクル資源として輸出されたのが177万台であり,輸出先での不適切なリサイクル処理により環境汚染が引き起こされる可能性も指摘された。そのため,廃家電が国内外で不正に処理されている現状を放置したままでは,法改正には着手できないとの判断から法案提出が見送られた。
 経済産業・環境両省は,自動車リサイクルの実態調査に着手した。04(平成16)年の自動車保有台数7475万台と05(平成17)年の新車販売台数585万台の合計から05年の自動車保有台数7560万台を引いた500万台が05年度に自動車登録を抹消され,再登録されていない車両の台数とされた。そのうち,中古輸出車両は135万台,使用済み自動車として移動報告されたのが305万台と推計され,約50万台が法施行前に引き取られた移動報告対象外の車両,約10万台が中古車販売業者が保有する中古車在庫と想定されている。ただし,届出なしに解体されている,違法に輸出されているという指摘もなされており,今後さらにリサイクル状況について実態調査を進める予定である。
 相次いで施行されたリサイクル関連法案は,見直しの時期を迎えており,リサイクルの現状を見据えながら,適正な処理の在り方と費用負担を考えなければならない。
(2)  最終処分場の残余期間と不法投棄問題
 環境省は,03(平成15)年度の産業廃棄物処理施設の設置状況を公表した。それによれば,最終処分場数は,遮断型35,管理型958,安定型1554となっており,残余容量は約1億8418立方メートルとなり,残余年数は6.1年分と1.6年分増加した。一方,中間処理施設数は1万9916施設と632施設増加した。  環境省は,05(平成17)年度の産業廃棄物の不法投棄は558件,投棄量17万2000t,件数,投棄量ともに過去10年間で最も少なかったことを明らかにした。ただし,石原産業(大阪市)が,岐阜,愛知,三重,京都の4府県で不法投棄した土壌埋め戻し材フェロシルトは,リサイクル商品を偽装したもので,一般的な産業廃棄物の不法投棄とは異なるという理由から調査結果には含まれていない。
 フェロシルト撤去問題は,愛知県瀬戸市の埋め立て分について,同県が撤去命令を下したことに対して,石原産業が処分取り消しを求めて訴訟を起こし,「全量撤去の費用は莫大なものとなり,会社存続を危うくする」として,現地での封じ込めを主張している。現地では,フェロシルトを詰めた袋が撤去されないまま山積みとされ問題視されている。06(平成18)年11月,石原産業の元役員らが廃棄物処理法違反(不法投棄)で逮捕され,法人も書類送検された。青森・岩手両県に92万8000tの産業廃棄物が不法投棄された事件では,04(平成16)年から行政代執行による撤去作業が進められているが,産業廃棄物特別措置法が,撤去主体を都道府県単位としているため,撤去方針の不統一が表面化している。すなわち,産業廃棄物の分別施設や現地事務所も別々に設置され,撤去方針を検討する協議会も別々に開催されている。そのため,両県が足並みを揃えて産業廃棄物撤去とその後の環境復元のイメージを作ることが求められている。
(3)  ゴミ焼却施設をめぐる談合問題
 各地の自治体が発注したゴミ焼却施設の入札において談合が行われ,不当に高い落札価格で自治体に損害を加えたとして地元住民が起こした住民訴訟では,相次いで原告勝訴の判決が下されている。
 06(平成18)年4月には,多摩ニュータウン環境組合(日立造船,約12億円),福岡市(日立造船外4社,約20億円),6月には横浜市(JEF,三菱重工業,約30億円),9月には豊栄郷清掃施設処理組合(日立造船,約4800万円),11月には神戸市(川崎重工業,約13億6000万円),尼崎市(日立造船外5社,5億3000万円)でそれぞれ談合に関与した企業に損害額の返還を命じた。
 公正取引委員会は,一連のゴミ焼却施設談合で,川崎重工業,三菱重工業,日立造船,JFAエンジニアリング,タクマの5社が中心となり,94(平成6)年4月から98(平成10)年9月まで談合を継続したと認定した。
 住民訴訟における原告の勝訴は,企業に対して社会的責任とコンプライアンス(法令遵守)を厳しく突き付けるとともに,損害賠償請求に消極的な自治体の責任も明らかにし,入札制度の在り方を根本から見直すよう迫っている。
(4)  各地の闘いの成果と課題
 06(平成18)年2月には鹿児島県鹿屋市の管理型最終処分場について,建設を差し止める判決が下され(鹿児島地裁),業者の控訴も棄却された(福岡高裁宮崎支部)。また,12月には福島県郡山市の安定型処分場について,将来にわたり処分場を建設しないことを内容とする勝利和解を勝ち取った(福島地裁郡山支部)。  他方,3月には北海道函館市の一般廃棄物最終処分場(管理型)について,操業差止を求める住民の請求が棄却された(函館地裁)。また,4月には福島県いわき市の一般廃棄物最終処分場(管理型)について,住民の請求を退けた判決に対する控訴が棄却された(仙台高裁)。
 このように,安定型処分場及び業者が計画する管理型最終処分場については,住民勝訴の事例が積み重ねられているが,自治体ないし第三セクター運営する一般廃棄物最終処分場(管理型)については,ダイオキシン類・環境ホルモンなどによる汚染を理由とした住民の申立てが退けられている。
 今後,勝訴事案の積み重ねをもとにした新たな処分場計画を差止めを実現するとともに,自治体が運営する最終処分場や焼却施設について,安全性を確保させる新たな闘いを構築する必要がある。