公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【3】 特別報告
八ッ場ダム訴訟報告
原告団・弁護団事務局長
弁護士  広田次男

1  はじめに
 「1兆円ダム」八ッ場を廻る住民訴訟は提訴以来3年目を迎えた。利根川流域の1都5県の六地裁で10回から11回の裁判期日を経てきた。6地裁とも各々独自の特色(即ち困難)を抱えながら,原告団・弁護団ともに元気である。
 各地とも裁判期日に於ける傍聴動員には,若干の疲れが見える県もあるものの,総体としては元気で,裁判終了後の集会も必ず開催されている。
 また,毎月末に行われる統一弁護団会議での議論も毎回予定通りに終了する事はなく,時間のやりくりは苦労の連続である。
2  運動
(1)  まず,特筆すべきは昨年10月9日に開催されたライブ&トーク加藤登紀子となかま達が唄う「八ッ場いのちの輝き」であろう。八ッ場ダムの問題を少しでも多くの人々に知って貰いたいとの思いから,運動体は様々な知恵を出し合い工夫を重ねてきた。ツテを様々に辿り,著名な歌手である加藤登紀子氏の協力を得て上記の催しとなった。また,議論を経て,主催者は弁護団とは別の実行委員会形式とし,内容的にも訴訟はオブラートに包んでという事になった。
 しかし,八ッ場ダムの問題を世間にアピールするとの効果は大いにあった。朝日新聞は前後2回に亘り八ッ場ダムについての特集記事を組み,10月9日のイベントについても言及していた。
 当日は会場である日本青年会館大ホール1300席が満員となり,加藤氏を中心に永六輔・池田理代子・野田知佑の各氏に,南こうせつ氏の飛び入り出演まであり,終了予定時間を1時間近くもオーバーするほどの盛り上がりようであった。
(2)  2ヶ月後の12月9日には,訴訟2周年記念集会を東京全水道会館ホールにて開催した。
 当日は基調報告として永源寺第二ダムの勝利判決について滋賀の吉村稔弁護士に「参加者の元気が出る」報告をしていただいた。
 また,各地6原告団が各地の特色を踏まえたユニークな活動報告をなし,弁護団からも訴訟の進行状況などについて報告がなされた。
 10月9日のような華やかさはないものの,参加者一同に「よし,頑張ろう」という元気印を分け与える内容だったと思う。
3  法廷
(1)  大半の法廷で提訴以来,原告ないし原告代理人による意見陳述が続いている。
 なかには,被告側から「原告側の発言が長すぎる」と異議が出されたり,裁判所から「毎回でなくともいいでしょう」との意見が出されたりしている法廷もあるが,多くの法廷が頑張り続けている。
(2)  昨年の議案書で「番外」として報告した(被告書面も含む)全準備書面のWebサイト「八ッ場ダム訴訟」への掲載問題(6地裁中3地裁の代理人であるA先生から「Webサイトへの期日前の掲載は民訴法違反である」との抗議が弁護団の一部になされた)は,弁護団執行部名によるの内容証明郵便により,当方の見解を回答した。
 発送以来,約1年を経過した現時までA先生は各地法廷に於いて,この件を取り上げないから「解決済」と当方では理解している。
(3)  「財務会計行為の違法性の承継」の問題については。更に主張を追加し,またより分析的な内容を展開するための努力が続けられている。
(4)  「治水」チームの,特に基本高水の計測データについて新たに資料が発見された。これを収集,分析して,主張として追加する予定であるが,書面作成の負担をどう分け合うか議論が必要である。
4  難題
 解決しない課題を2つ抱えている。
 第1は行訴法23条により,国の参加を求めるか否かである。国の参加は有利か不利か,参加を裁判所は認めるか否か,判断が6地裁で分かれた場合の訴訟の進め方,などなどの論点を廻り議論の種は尽きない。
 第2は,立証計画の立案,交渉である。工学系,特に河川工学の大学教授など専門家をして証言して貰う事の困難さは充分に予想していたつもりであった。しかし,現実の壁は,想定を越えていた。証人候補者への打診,依頼交渉はまだまだ続きそうである。
5  いずれも既に数回に亘るの議論を経ても結論を得ないため思わず会議中に「議論の収集がつかないのは事務局長としての能力がないからではないか」と述懐したところ,「では責任を取って終身,事務局長をやり続けろ」と言われて少し悩んでいる。
 いずれにしても,訴訟としても運動としても気の抜けない時間が続きそうである。